「足りないんだ」
















さんが足りない」















そう言って伸びた腕が私を引っ張る。
彼の前に座ってたから、当然後ろに体重が掛かる。



「武、どうしたの?」
さんが、足りない」



首に顔を埋める彼の髪がくすぐったい。
身を捩るとさらに強く引かれる。



「ちょっと、どうしたの?」
「だから、足りないんだって」
「私が足りないって・・・」
「そのまんま」



だから少しこのままでいてください。ってお願い。
いつものにっこり笑顔を浮かべて言われれば断れない。
端から断るつもりもないけれど。



「よしよし、まだ中学生だもんね」
「・・・子供扱いはナシって約束だろ?」
「子供扱いじゃないよ。甘やかしてるの」



彼の頭を二、三回撫でる。
近い距離に満足だけど、何だか物足りない。



「武、武」
「何?」
「ちょっと離れて」
「え・・・っ」
「いいから」



躊躇っている腕を無理矢理離すと、正面に向き直る。



「はい、ぎゅっ」
「なるほどな」



腕を広げて彼の胸に飛び込む。
ポスっと受け止めて、感嘆の声を上げる彼に苦笑する。



「武は暖かいね」
さんの方が暖かいって」



こうやって向かいあって抱きしめて、お互いを埋める。
与えられるだけでも、与えるだけでも満足できない。
















物足りない。















だから私達はお互いを充たす為に、抱き合う。
今はこれだけで十分。














「ワタシは足りた?」


「おう、満タン!」

























(最後に交わしたキスの味様へ愛を込めて!)


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送