大切な
「うぅ、緊張するなぁ〜〜〜」
「先輩、肩に力入りすぎてますよ」
そう言って長太郎はクスクス笑った。
今日はの大切なピアノのコンサートの日だ。
この日の為には1ヶ月前から練習していたのだ。
そして、の出番はもう、まじかに迫っている。
「そんなに緊張しなくても、先輩なら大丈夫ですよ」
「でも、今日は音大の関係者だって来てるんだよっ」
の夢はピアニスト
だから、どうしても今回の演奏は最高のものにしたい。
その気持ちは長太郎にもよく分かる。
だが、今の状態ではいい演奏どころではない。
「先輩、少し落ち着いてください」
「落ち着けって、落ち着けるわけないでしょッ」
「今のままじゃ、いい演奏なんてできませんよ?」
「・・・・ッ!」
長太郎の言葉が効いたのか、はその場にへたり込んだ。
「先輩?」
声を掛けると、の不安げな声が聞こえてきた。
「失敗したら・・・どうしよう・・・・」
今にも、泣き出しそうな勢いでドレスのスカートをギュッと握り締めている。
そんなの様子に長太郎は、後ろからを優しく抱きしめた。
「大丈夫ですよ。先輩は失敗なんかしません」
「でも・・・」
「先輩の頑張りは俺が一番よく知っています。上手く弾こうと思わないで、いつも通りに演奏したらいいんですよ」
「いつも通りって・・・?」
俯いていたが顔を上げる。
長太郎はまっすぐを見て話出した。
「俺の前でピアノを弾いてる先輩は本当に楽しそうで、聞いてるこっちまで幸せな気持ちにしてくれるんです。
俺、先輩のピアノに何回も助けられているんですよ?先輩は知らないと思うけど」
照れくさそうにエヘへと笑う長太郎にもつられて笑う。
「先輩、失敗するなんて思わないでください。先輩ならきっと最高の演奏が出来ると信じています」
「・・・ありがとう」
嬉しそうに笑うの顔には不安なんてどこにもない。
は、スクッと立ち上がり長太郎の方に向いた。
「ありがとう!私、行ってくる!あ、そうだ」
クルッと回り、長太郎に近づきそっと耳打ちする。
「 」
「ッ・・はい!」
満面の笑みと共には舞台に立った。
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