明日は卒業式。
できれば、一緒に卒業したかった。
でも、それは無理だから・・・
GRADUATION
はうーんと伸びをして、大きな桜の木を見上げた。
さっき終わった卒業式。
皆の心は晴れ晴れしてるのに、の心は沈んでいた。
その原因は「先輩」
こいつだ・・・
「若っ、よくここに居るって分かったね」
「跡部部長が教えてくれたんです。」
「そっかぁ」
「・・・・」
「・・・・」
二人の間に意味のない沈黙が続く。
「・・・卒業おめでとうございます」
沈黙を破るかのように日吉が喋りだす。
「何?その、適当な言い方はっ」
「そんなことないですよ」
若はそう言って少し笑う。
はこの顔が好きだった。
この笑顔を見るだけでなぜか、気持ちが優しくなる。
言えないことも言えるような・・・そんな気持ち
「ねぇ、若は私が卒業して嬉しい?」
「何ですか、いきなり」
若は怪訝そうな声を上げたが、は続けた。
「私はねぇ、ちっとも嬉しくないの・・・
だってここで若と生活することもないし、
なにより、会える時間がなくなっちゃう・・・し」
最後の方は声にならなかった。
゛若と一緒じゃない″
そんな気持ちが溢れ、涙となっての瞳から零れた。
「先輩、少し落ち着いてください」
「落ち着いてるよぉ」
「それのどこが落ち着いてるんですか?」
「もう、ちょっと待ってっ。そう簡単に涙は止まらないのよ」
「はぁ、仕方ないですね」
そう言って若はを抱きしめた。
ポンポンと規則正しいリズムで背中をたたかれる。
「ごめん・・・ありがとう」
「悪いと思っているなら早く泣き止んでください」
憎たらしい口調とは裏腹に、背中をたたく手は優しかった。
「先輩」
「なに?」
「さっきの答えです」
日吉はを抱きしめたまま話し出す。
「俺は、先輩が卒業することに関して別にどうも思いません。
ただ、一生会えなくなるわけじゃないんです。
会いたいなら時間を作ればいい。俺だって、それぐらいの努力はします。
それに、部活だって見に来てくれてかまわないんです」
「若・・・」
「だから、笑ってください、折角の記念日なんですから」
「・・・うん、ありがとうっ」
は顔を上げにっこり笑う。
それにつられて若も少し笑う。
「ありがとう、若。大好きだよ」
「俺も、」
ざあっと音がして、その先は聞き取れなかった。
けれど若が何を言ったかは分かった。
俺も好きですよ。
離れても気持ちは一つ。
その事がすごく嬉しかった。
(加筆修正 05/11/15)
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