気が付けば、私は城の頬を殴っていた。







心情シンドローム








パンッ!!

「・・・・・ッ!!」
?」

高い音と、痺れた手のひら。
城を殴ったという事実は、後からやってきた。

「・・・いい加減な事言わないでよ」

自分でも驚くくらい低い声が出た。
怒りで声が震える。

「図星を指されて、手が出たんですか?」
「ッ・・・ふざけんじゃないわよッ!!あんたに、あんたなんかに教官の何が分かるっていうのッ!?」

いつもよりも大きな声。
その声を聞いて、他の隊員達も集まってくる。

「何も分かりませんよ。見殺しにしたって事以外は」
「城ッ、それ本気で言ってるの!?」
「当たり前でしょう?事実なんですから」

グッと噛み締めた唇から血が流れる。

悔しい!こんな奴に、何も知らない奴に教官の事を言われるのはッ!

「今の姿、あんたの父親が見たらどう思うかしらねッ」

そう言って、私はその場から走り去った。
その後ろで、誰かの呼ぶ声が聞こえたけど。
振り向く余裕なんてなかった。
溢れて、零れる涙。
拭っても、拭っても後から溢れてくる。
隊員が誰もいない所・・・・女子トイレの前で、私は膝を抱えて泣き声を挙げる。

「っく・・・な、なんでッ・・わかっ、分かってくれないのよっ・・・っ!」
ちゃん」
「ッ・・池上さん」

誰も居ない場所で、泣く。
いつからかは忘れたけど、私の癖。
これだから女はって思われたくないから、私は人前では泣かない。
特に、ここでは。

「大丈夫?」
「ぁ、っ・・は、い」

赤く腫れた目元。
それなのに、悔し涙は止まらない。

「いいよ。別に無理に止めなくても」
「あ、私・・悔しぃッ!あんな・・風に言われて何も出来ないの・・・ッ」
ちゃん」
「男だったら・・ッ「ちゃん」」

遮る様に、池上さんが話す。

「それは違うよ。男も女も関係ない。それはちゃんだって分かってる事だろ?」
「で、でも・・っ」
「確かに男の方がこの仕事は、いいかもしれない。でも、ちゃんには、ちゃんにしか出来ない事がある」
「・・・・」

コクンと一つ頷く。
その時、ピーピーとインカムが鳴った。
もちろん、出たのは池上さん。

「はい。はい、居ますよ。・・・分かりました。すぐ行きます」
「・・・・西脇さん?」
「違う。教官だよ。ちゃんを探してた」

グイッとまだ濡れてる目元を拭って、立ち上がる。
スゥと大きく息を吸い込む。

「池上さん、ありがとうございます」
「さっきよりは、よくなったみたいだね」
「はいっ」

苦笑い。笑顔とは言いがたい表情を浮かべて。
私は、池上さんと教官の待つ場所へ向かった。

















「あ〜、懐かしいなぁ」
「何がですか?」

ベッドを背もたれに、天井を仰ぐ。

「皇親が入隊した頃の事を思い出してたの」
「あぁ。あの時の平手打ちは結構きましたよ」
「あははッ、ごめんね」
「別に、俺も同じくらい酷い事言いましたから」

そう言って、皇親は少し俯く。

「ほぉらッ!暗い顔しないのッ!昔の事でしょう?あの時があったから、私達もこうなったんだし」
「相変わらず、前向きですね」
「まぁね。それだけが取り柄だから」

にこッと笑いながら、うーんと伸びをする。

さん」
「なぁに?」
「好きです」

短い愛の言葉。
昔とは違う意味で、涙が出る。

「私も、大好き」

あの時は見れなかった微笑み。
こんな風に優しく笑うなんて思いもしなかった。
優しく抱きしめる腕に、私はもう一度好き、と呟いた。



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