彼と別れて早一ヶ月。
あれから、彼とは一度も会っていない。
そして、海は今日も変わらない。












S E A










病室の窓から海を見る。
ザザンと寄せては返す波が見える。

「スティング」

名前の彼は突然現れて、あっという間に私の心を捕まえた人。
面倒見がよくて、傍にいてくれた人。
自分を兵器だと言った人。
最後に、またなと嘘をついた人。

溢れる思いは、止まる事を知らない。

「やっぱり会いたい、な」

呟いて、海を見る。
けれど、何も変わらない。
寄せては返す波が見えるだけ。

床に足を下ろし、いつもの様に病室を抜け出す。
サンダルを履いて、砂浜を歩く。
それでも、彼はいない。

「スティング、会いたいよ」

一筋、涙が頬を伝う感触。
濡れた感触に自分が涙を流しているのだと気づく。

こんな日々が毎日続いている。
海を眺めては、彼を求める。
けれど、それが叶ったことは一度も無い。


不意に、頭上を大きな影が覆った。
轟音と共に、大きな機体が頭の上を通過する。
否、通過する前に止まった。

「な・・・・・何、これ」

目を丸くして、大きな物体を見上げる。
今まで見たことのない物。

「・・・・・・・ッ」

轟音と共に、遠くからスティングの声が聞こえた。
聞き間違いかもしれない。
けれど、彼かもしれない。
ハッと辺りを見回して、彼の姿を探す。
けれど彼の姿は何処にもなく、代わりに大きな物体。

ッ!ここだ!」
「ス・・・ティング・・・っ」

大きな機体から人が顔を出す。
目を見張る。
間違いなく会いたかった人。


大きな機体は、そのままゆっくり海に降りる。
波が私の足首を濡らす。
変な格好をした彼が、海に降りる。
ゆっくり、ゆっくり私の方へ歩いてくる。

、お前だけは忘れなかった」

ヘルメットを取って、私の前で立ち止まる。
あの時見せてくれた笑顔と同じだった。

「スティングッ!!」
「迎えに来たぜ、お前を」

嬉しくて、足が濡れるのも構わず彼の胸に飛び込む。
受け止めて、強く抱きしめてくれる腕。

「俺が兵器でも、お前は傍にいたいか?」
「兵器なんて関係ないよ。私は、貴方の傍にいたいの」
「サンキュ」

そう言って彼は、最初で最後のキスをした。

















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