その日から2日、私はスティングに会えないままだった。
熱も引いて、毎日浜辺に行っても彼は来なかった。
もっと話をしたい。もっと一緒にいたい。
気づけば彼の事ばかり考えていた。
「スティングー」
呼んでみたって会える訳じゃないのに。
そうして一しきり歩いた後、私は病室に戻っていく。
明日は会える。そう思いながら。
S E A
翌日、私は朝早く海に来た。
まだ朝日も昇っていない。
薄暗い海は少し怖い感じがして。
私は、膝を抱えて浜辺に座った。
「スティングー」
なにかの呪文のように彼の名前を呼ぶ。
「なんだよ」
まさか返事が返ってくるとは思わなくて。
勢いよく振り返った。
「スティング・・・?」
「クッ、なんて顔してんだよ」
自分の目が未だに信じられない。
「待たせて悪かったな」
「スティングーっ」
立ち上がり、飛びつく。
心は素直だ。
2日会えないだけで心が重くなり、今出会えて心は軽くなる。
「なに泣きそうになってんだ」
私の顔を見て笑いながら、抱きとめてくれる。
暖かい腕で。
たった数日しか会ってないのに、彼がこんなにも心を占めているなんて思わなかった。
「」
彼が名前を呼ぶ。
名前を呼ばれただけなのに、胸が高鳴る。
「もうここには来れない」
それは、もう会えないという事で。
「・・・・・・・どうして?」
「俺達は兵器だからだ。戦闘が始まれば戦う」
「兵器って・・・・・」
「ファントムペイン、聞いた事あるか?」
海を見ながら話す彼の横顔を見る。
ゆるゆると首を横に振り、彼を見つめる。
「そうか、知らないならそうの方がいい」
「スティング」
「、お前はそのままでいろ」
「どうして、そんな・・・・・」
いきなり告げられる言葉は次々に私の胸を締め付ける。
苦しくて、苦しくて。
気づけば涙が零れていた。
「」
「どーしてッ、そんなこと、言うの?」
涙を拭う事もせず、ただ二人立ったまま。
「どーして、また明日って・・・言ってっ、別れてくれないのっ」
後から後から溢れて零れる涙。
それは海の水とは違って、暖かい水。
「スティングは・・・ッずるいよっ!」
悲しそうな彼の顔。
その表情を見て、さらに涙が溢れる。
「俺には、明日がないんだ」
「・・・・・・・・」
「いや、ないと言うより確証がないんだろうな」
苦しそうに顔を歪める彼。
「俺達は兵器だ。人が持たぬ力を持ち、殺戮を繰り返す。それが俺達だ」
フッと笑った彼の顔は、自分を嘲笑っているようで。
「そ、んなことッ、ないよ!」
「?」
「兵器だからってっ・・・明日を迎えちゃいけないのっ!?」
涙でぐしゃぐしゃの顔で声を上げる。
久しぶりに大声を出したから、喉が痛い。
上手く話せない。
「どんな罪を犯した人でも、一日がどんなに辛くてもっ、明けない夜はないの!
明日は誰にでも、どんな人にでも必ず来るからっ」
「」
彼が優しく微笑む。
初めて見る、優しい笑顔。
「だ、からっ・・そんな事!い・・言わないで!」
瞬間、ぎゅうっと力強く抱きしめられる。
「サンキュ、」
聞いた事のない、優しい声。
私は彼の胸に顔を埋めて泣いた。
明日はないという彼と、そして会えない事への悲しみに。
「スティング」
一しきり泣いた後、名前を呼ぶ。
「なんだ」
「スティングに会えてよかった」
「あぁ、俺もだ」
まだ少し涙声だけれども。
嬉しそうにスティングも返してくれる。
二人で座って、朝日が昇るのを待つ。
だんだん、辺りが明るくなってくる。
二人を金色の光が包む。
「」
「・・・・・・・」
「お別れだ」
スっとスティングが立ち上がる。
「この数日、お前に会えて本当によかった」
「スティング」
「じゃあな」
くるりと背を向けて歩き出す彼。
私はぐっと下唇を噛み、立ち上がった。
「スティングっ!!」
最後に彼の名前を呼び、振り返り様、
「また、明日ね」
精一杯の泣き笑い。
すると驚いた顔をした後、
「あぁ、またな」
そう言って、スティングは笑った。
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