Proges




大好きな人達がいなくなって。
辛くて、苦しくて、悲しくて。
もう大切な人なんてつくらない。
そう思ってたのに・・・
また大切な人達ができてしまった。























ニコルが戦死して一日がたった。
涙が枯れるんじゃないかってぐらい泣いた。


なのに、


さん』


あの声を思い出すたびに、涙が溢れてくる。


「ニコルッ・・・・どうしてぇ・・・」


優しくて、ピアノが大好きだったニコル。
そんなニコルのロッカーにはピアノの楽譜が入っていた。
もう、弾く人はいない。
そして、あの優しい音色も聞けない。


、入るぞ」


声が聞こえたと思ったら、返事も待たずに入ってくる。


「・・・イザーク」
「また泣いてるのか」


少し呆れた声と共に、近づいてくる気配。


「ねぇ、イザーク・・・」
「なんだ」
「別れよ?」


俯けていた顔を上げて、イザークを見る。
驚いた顔。
私の頬を涙が伝う。


「本気か」


低い声が聞こえてくる。
先程と違い、みるみるつり上がる瞳。


「もう、疲れちゃったの・・・・」


相変わらず止まらない涙。
なんの為に泣いているのか分からなくなる。
ニコルがいないからか。
それとも、イザークにこんなことを言っているからなのか。


「これ以上、大切な人達がいなくなるのは嫌なの」
「だから別れるのか」


これは私の弱さ。
大切な人を守る事もできない。
何も出来ない無力な自分。
今も昔も変わらない。


「ふざけるなッ!!」
「ッ・・・」


堪忍袋の緒が切れたイザークが、怒鳴る。
部屋中に響き渡るイザークの声。


「貴様、俺が言った事忘れたのか?!」
「言った事・・・?」
「俺が守ると、お前にそう誓っただろう?!」


イザークと付き合う事になった日、イザークは私にある約束をしてくれた。


『必ず守る』と。


その言葉を思い出すけれど、弱い私には信じられない。


「・・・・・・信じられない」
!!」


グイッと肩を掴まれる。
鋭い視線と目が合う。


「だって・・・イザークもいなくなったら、私生きていけないッ!」


涙を流しながら、肩を掴んでいる腕に縋る。
ズルズルと座り込む。


「もう、これ以上大切な人・・・いなくなってほしくないの」

「だから、」


縋るような瞳で見上げる。
だから、別れて。
そう瞳で訴える。
けれどイザークの口から出てきた言葉は、意に反して、


「断る」
「イザークッ!」
「だから、俺が守ると言ってるだろう!」
「けどッ!!」
「なら、何をすればお前は納得する?」


膝をついて、私の顔を覗き込む。


「何をしたら、お前は別れるなんて言わなくなるんだ」
「イザ」
「俺の言葉が信じられないか?」
「ッ!!」


青い瞳が不安げに揺れる。


「ごめんなさい!」


勢いよく抱きつく。
途端、イザークの動きが止まった。
その瞳が何を言っているのか、すぐに分かった。
自分の弱さから、イザークの言葉すら疑ってしまった。


「信じれなくてごめんなさいっ」

「私が弱いから、だから・・・ッ」


ごめんと繋ごうとした言葉は、言えなかった。
すぐに離れる唇。


「イザーク」
「謝らなくていい」
「でも・・・」
「誰だってそうなるだろ。こんな時なんだから」


弱い私でもこんな事を言っても、まだ好きでいてくれる。
こんな人を私は自分から切ろうとしたのだ。
今更ながら、後悔する。


「お前の不安も全部俺が背負ってやる」
「イザーク」
「俺は絶対に死なない」
「・・・・・ありが、とう・・・」


ボロボロと零れる涙。
ニコルを失って、辛いのは一緒なのに。
それでも、私の事を一番に考えてくれる。
その優しさが、嬉しくて。


「イザーク、私の・・・大切な人になってくれますか?」
「当たり前だ」


フンと偉そうないつものイザーク。
その姿にクスリと笑みが零れ、私達はもう一度誓いを交わした。



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