優しい旋律

優しい音

それは、私の大好きな人の音





ピアノ







「ねぇ、長太郎」
「なんですか?先輩?」
「ピアノ弾いてほしいなッ」
「・・・いきなりどうしたんですか?」

私のお願いに少々戸惑い気味の長太郎。

「聞きたいの」
「俺、下手ですから」
「そんなことないッ!長太郎は上手だよ」

だって、聞いたことあるから
放課後、音楽室で。
すごく綺麗な音色で、涙がでたのを覚えてる。

「やっぱり、だめ?」
「そんなことないですけど、人に聞いてもらう程じゃないですから」
「お願いッ!!」
「・・・・・分かりました。」
「本当に!?ありがとうッ!」

久しぶりにあの音が聞ける
それに、ピアノ弾く長太郎の姿も・・・・

「そうと決まれば膳は急げよ!」
「ちょ、先輩ッ!今からですか?」
「うん!」

私は強引に長太郎を音楽室に連行した。
音楽室は夕日を浴びて、オレンジ色に染まっていた。
長太郎は、ピアノの椅子に座り、鍵盤に指を置く。

「それじゃあ、エリーゼのために」

長太郎の指が鍵盤をたたくたび、綺麗な音色が音楽室に広がる。
この音色は彼そのものだと思う。
優しくて、大きくて、でもどこか切なげで・・・・


指が止まり、長太郎が立ち上がる。
瞬間、夕日を浴びた長太郎の髪がキラキラ光って・・・・
その光景があまりにも綺麗で・・・・

「どうでしたか?」

少し不安そうな声で尋ねてくる。

「すっごくよかったよッ!!」
「よかったっ」

安心したように長太郎が笑みを零す。
私もつられて笑顔になる。

「私のわがまま聞いてくれてありがとうッ」
先輩のわがままなら喜んで聞きますよ」
「それは、私も同じ」
「・・ありがとうございます」

ちょっと面食らったような長太郎の表情。
どうしたのと言うと、笑顔で、何でもありませんと返ってきた。

「俺って、幸せ者ですね」
「それも同じだね」

そう言って、私達は笑い合って、キスをした。













(加筆修正 05/11/15)





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