思い出に変わっても









地区大会予選。
インターハイに向けての最初の一歩。
もちろん、城惺高校も例外ではない。

「んー・・・こう人が多いと探しようがないなぁ」

試合会場を延々歩き、目当ての人を探す。
が、一向に見つかる気配がない。

「はぁ、本当にどこにいるんだろう・・・」

来た道を戻ろうかと後ろを振り返った時、

っ」
「あー!やっと見つけたぁ」
「悪い、俺も動き回ってたからな」

苦笑しながら、青木くんが笑う。

「試合、これからだね」
「あぁ」
「どう?自信はある?」

顔を覗き込む。

「やれる事はやってきた。結果は自ずとついてくるさ」
「なら、大丈夫だね」

満ち足りた笑顔。
その笑顔に、私も嬉しくなって頷く。

「じゃ、昼飯でも食うか」
「うん、私もお腹ペコペコ」
「青木」
「「ん?」」

青木くんの名前を呼ぶ声。
その声に、私もつい振り返ってしまう。

「「・・・・・・・・・あーー!」」

少し間を空けて、トーン違いの声がはもる。

「広海くんっ!?」
「お、まえ、か!?」
「はは、やっぱりこうなるか」

私と広海くんの声に、もう笑うしかない青木くん。

「なんでここにいるの!?」

本当に、驚いた。
まさかこんな場所で広海くんに会うなんて思ってもみなかったから。
それは青木くんも同じらしい。

「いや、青木に用があって」
「俺に?」
「そう、今いいか?」
「あー、悪い」

心底悪そうに、青木くんが広海くんに謝る。
私に遠慮しての事だとすぐに分かった。

「え、なんで?私また後で来るよ?」

「あー、お前ら付き合ってる、んだっけか」

広海くんが、少し言いづらそうに言う。

「うん!いいでしょ?」
「アホか、俺にそれを聞くんじゃねぇよ」
「もうちょっと、悔しがってよ〜」
「なんで、俺が悔しがらなくちゃなんねぇんだよッ」

ああ言えば、こう言う。この間青木くんから聞いたとおりだった。
昔から、全く変わっていない。
こういうズバズバ言うところなんて、特に。

「プッ、変わってないね広海くんは」
「お前もな」
「はいはい、二人ともそこまでにしとけよ?」

私達のやりとりを見ていた、青木くんが止めに入る。

「じゃ、俺出直すわ」
「え!だからいいって!」
「それじゃ、青木に悪いだろ」
「なら、三人ならいいでしょ?」
「折角来てくれたんだしな。俺は構わないぜ」

その言葉を聞いて、広海くんを見る。
少し複雑そうな顔をしていたけど、分かったと呟き。

「じゃ、向こう行こうぜ」

早速俺様ぶりを発揮していた。






























あれから場所を移動して、木陰で仲良くランチタイム。

「あ、私、なんか飲み物買って来るね」
「おう」
「気をつけろよ」
「青木くん、心配しすぎ」

笑いながら、じゃぁねとその場を離れる。
別に飲み物なんて特に欲しいわけじゃない。
けれど、こうでもしないと青木くんと広海くんが、二人きりになる時がない。
広海くんに会えたのは嬉しかったけど、私に会う為に来たんじゃない。

「ちゃんと目的、果たしてもらわないとね!」

20分後、待ちくたびれたといわんばかりの広海くんが待っていた。

「あれ、青木くんは?」
「試合前のミーティング」
「えーッ」
「えー、じゃねぇよ。お前変な気きかせやがって」
「あら、ばれてたの?」
「バレバレだっつーの」
「残念。けど、ちゃんと話せたでしょ?」
「あぁ、そりゃな」
「じゃ、何か言う事は?」

ニヤニヤと笑いながら顔を見る。
すると、渋々いった感じで、

「サンキュ」

と返してきた。
それが、あまりにも広海くんらしくて、思わず笑ってしまった。

・・・」
「ごめん、ごめん。怒らないでよ!」

バッと頭を手で庇い、殴られないようにする。
それを見て、はぁとため息をつく。

「んじゃ、青木の試合見に行くか」
「うん!きっと青木くんも気合十分だよ」
「なんてったって、地区予選だしな」
「それもあるけど、広海くんが見てるからってのもあるかな」

言った後、広海くんは少し驚いた後、そっかと顔を綻ばせた。
その表情があまりに意外だったから。
二人の絆の深さに少しヤキモチをやいて。

「コンビの座は譲るけど、彼女の座は譲らないからね?」
「バーカ、青木がお前一筋なのは見てれば分かる」

まさか、あの広海くんからそんな言葉が聞けるなんて思ってなくて。
私は、飲んでいたお茶で盛大に噎せた。







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