08. お菓子よりも魅惑的な
「クロさん、買ってきましたよー」
「ごくろうさん」
部屋で寛ぐクロさんの鼻先に、箱を差し出す。
「あったのか?」
「一個だけありました」
言った瞬間、ニヤリと笑みが深くなる。
「美味そうだ」
「そうですね、ここのガトーショコラは絶品ですしね」
「それもだが」
「何か他にあるんですか?」
気づかないのかと、後頭部をぐいッと押され。
唇に柔らかい感触。
「これ、だ」
「ク、クロさんッ!」
真っ赤な顔で口元を押さえて、立ち上がる。
「さーて、食べるか」
嬉々として箱を開け、手づかみで食べる姿に息を吐き出す。
「、食べないのか?」
「・・・・・・食べますよ」
そう言って擦り寄るあたり、クロさんもケーキも相当好きなんだろうな。
差し出されたガトーショコラを一口齧りながら、思った。
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