日 食









大きな爆音と共に私は目を開けた。

「っ?!」

な、何!?

パラパラと落ちてくる砂埃。
今までにない何かが起きてるのは明らかだった。
ど、どうしたらいいんだろう。
恐る恐る扉を開けて様子を伺う。
やけに静かな廊下。人が通る気配もない。

でも、今なら逃げられるかもしれない。

今日はあの青年、テスラも来ていない。
ここに来ないということは、これない理由があるということで・・・

逃げられるかも!!

逸る気持ちにノドがなる。
意を決して扉の一歩外に出る。


いける!


それから走った。
右も左も分からないけれど走った。
右、左、左、また左。
走って、走ってたどり着いた先には・・・






うそ・・・・どーしてこうなるの?






ねぇ、神様!







「どこに行かれるおつもりですか?」

あぁ、私はここから逃げる事も出来ないの?

「僕は言いましたよね」
「・・・・・」

恐い、明らかに怒気を含んだ声。
彼が一歩進むと同時に私は一歩下がる。
逃げなくちゃ!
体を反転させて、来た道を全速力で戻る。

「チッ」

舌打ちが聞こえたかと思ったら、彼の姿がすぐ隣にあって。

「あまり手間を掛けさせるな」

低い声と首に走る鈍い痛み。
ガクンと膝の力が抜けて上体が倒れるのと同時に、私の意識もおちた。







目が覚めると、私の大嫌いな場所。

「目が覚めたか」

聞こえる声は、姿を見なくても分かる。

「どうやら君はここを抜け出したいらしいね」

恐怖に見開いた瞳は瞬きすることすら忘れている。
恐い気持ちだけが、体を支配していく。

「君の力で取り戻すのを待っていたが、時間切れだ」

パチンと指が鳴ったかと思えば、急激な頭痛。

「・・・ッ!!ぐ・・・!ッ!!」

体験した事のない痛みと共に、遠くなりそうな意識。







もう、いや・・・・誰か、助けて!!!






瞬間、パンッと破裂音が聞こえ痛みが消えていく。

「はぁ・・・・はぁ・・・・ッ」

大きく肩で息をしながら、額に浮かぶ汗を袖で拭う。

「割れるかと・・・思った・・・・・・え?」

声が、戻ってる?うそ、なんで?

「本能的に君がかけた鍵を打ち消させてもらった。これで君は喋れるはずだ」
「・・・・・・ぁ、はい」
「これから君の武器はその声になる」
「・・・・・・」
「ここを抜けたければ足掻くといい」
「ッ・・・・」
「君が抵抗しないのであれば、君の安全は約束しよう。ただし・・・」

その先は聞かなくても分かる。
抵抗するなら、きっと私は殺される。
生か死か、理性か本能か。
私には、選べない。
いや、答えはもう出ている。だけどそれを実行する術がない。

「・・・・部屋に、戻ってもいいですか?」
「あぁ、構わない」

その言葉に、藍染様の笑みが深くなった。
ずっと見ている事が出来ずに、私はその場を走り去った。






「はぁ・・・ッ!は・・・っ」

久しぶりに走ったから、息が切れて辛い。
だけどそれ以上に辛いのは、ここから逃れられない事。
逃げたいけれど、自分の命と引き換えは嫌だ。

「もう、どうしたらいいの?」
「お戻りですか」
「テ・・・テ、スラ」
「声が、戻ったのですね」

ここに来て、初めて彼と言葉を交わした。
紙の上ではなく、自分の言葉で。























メモ
泥沼に足を突っ込みかけてます。
果たして抜けられるのか!
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