たりで、


    とてもせな日常







「貴志くん、これから買い物に付き合ってくれないかな?」
「買い物、ですか?」
「母さんに頼まれたの。一人じゃつまらないから、よかったらどうかなって」
「はい、構いませんよ」
「ありがとう。じゃ、行こうか」

彼女はさん。
夫妻の実の子供だ。
仕事の関係で上京していたらしいが、3ヶ月前この町に戻ってきた。
夫妻と同様、とても良くしてくれる。

「貴志くん、学校はどう?」
「毎日楽しいですよ」
「そっか、よかった」
「・・・・・・あ」
「貴志くん?」
「あそこに・・・・」

視線の先には小さな子供が一人佇んでいた。

「あそこ?・・・・何もないよ?」

指を指した先には子供がいるのに。
さんに見えないと言う事は・・・・・あれは妖。

「いえ、すみません。俺の見間違いでした」
「・・・・そっか、残念」
「残念?」
「・・・こんな事言ったら笑われるかもしれないけど。小さい頃はね、おばけが見えたんだ」
「え?」


意外だった。
こんなにも身近に妖が見える人がいたなんて。

「小さい頃ってことは、今は見えないんですか?」
「いつからだったかなぁ、急に見えなくなったの」
「そうですか」
「さっき、何か見えたんでしょう?」

言うべきか言わざるべきか迷い、さんの瞳を見る。
真剣な表情。

「・・・・・・はい。小さな子供が一人」
「そっか」
「・・・・あの、夫妻には」
「言わないよ。私だって言ってないもの」
「え・・・」
「昔はちょっと変わった子って思われてたみたいだけど」
「・・・・・」

小さく笑う姿が、何故か寂しそうに映って。

「寂しいですか?」

つい口をついて出てしまった。
さんは、驚いた顔をしていたがやがて瞳を伏せて、

「そうだね、ちょっと寂しいかな」

そう、空に向かって呟いた。
青く、青くどこまでも続いている空に。














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