未来を見つけて 19
に関わる事件が起きた翌日
本木は、うーんと唸りながら一人の部屋の前を行ったりきたりしていた。
あの日、いつも笑顔のが叫び、怯えているを見て、本木は驚きと同時にショックだった。
そして、動く事すら出来なかった。
何が起きているのか分からず、の悲痛な叫びをただ聞くことしか出来なかった。
ビリーに運ばれていくを見ながら、何も出来なかった自分に本木は腹が立った。
「やっぱ、止めた方がいいかな〜・・・」
「本木さん？」
「うわッ！？何だよ！って城かよ・・・」
振り向くと、いつもと変わらぬ顔で城が立っていた。
「こんな所で何してるんですか？」
「あ？いや、別に何も！」
見るからに慌てている本木。
城はちらりとその部屋の名前を見た。
「さんに、用事だったんでしょう？」
「え！？」
「図星ですか」
「・・・んだよッ！なんか文句でもあんのか？」
少し照れながら、開き直る本木。
それを冷静に受け止める、城。
「さんに用事なら、入ったらどうですか？」
「〜〜〜っ・・それが、出来れば苦労しねぇよ・・・」
「本木さん」
あ〜ッと頭を抱えながら本木はその場に座り込んだ。
用件はの様子を確かめたい。
今日は昨日の様な状態じゃない事を。
ただ、それだけなのだが、それを聞くにはの過去を聞くことになる。
あれだけ狼狽していたの姿を見ると、自分が聞いてもいいのか、嫌な思いをさせないかと不安になる。
仲間だからといって、言いたくもない事を無理に言って欲しい訳じゃない。
そんな事を考えていた本木は、３０分近くの部屋の前をうろうろしていたのだ。
「くそっ」
「入ればいいじゃないですか」
そんな本木の考えを、知ってか知らずか城は一言呟いた。
「だーかーらっ」
「余計な事を考えるから、行動できなくなるんでしょう？」
本木は、うっと言葉に詰まった。
その通りすぎて、何も言い返せない。
「さんがどう思うかなんて、誰にも分からない事ですよ。それを考えていても仕方ないでしょう」
「城」
「いつもの本木さんらしく、体当たりでいったらどうですか」
「お前、それ褒めてんのか？でもまぁ、サンキューなっ！お前のお陰で踏ん切りがついたぜ」
スクッと立ち上がり、笑顔で城に礼を言う。
「どういたしまして。それじゃ頑張ってくださいね」
「おう！」
クスッと笑いながら、城は自分の部屋へと入っていった。
よし！っと気合を入れながら、本木はの部屋のインターホンを鳴らした。
ビーッという音がなってから、はーいとの声がした。
「本木だけど、ちょっといいか？」
「本木！？いいよ、どうぞ」
シュッと音を出して、本木はの部屋に足を踏み入れた。
「で？どうしたの？」
聞いてくる、の表情は昨日より大分落ち着いているが、まだどこか頼りなかった。
「あ、あのさ・・どうしてるかなって、思って。昨日あんな事があったから・・そのー」
いざ突入したものの、どう言えばいいのか分からず本木は、たどたどしく話した。
話を最後まで聞いたは、表情を少し強張らせた。
「・・心配掛けちゃったみたいだね。ごめん」
「あ！いや！そうじゃなくてッ・・・あー！どう言ったらいいんだッ」
が謝ったのを見て、違うと弁解するが言葉が見つからず、仕舞いには頭を抱え悩み込んでしまった。
そんな本木を見たは、プッと噴出し笑い始めた。
「？」
「あはははッ、ごめんごめん。コロコロ変わる本木が面白くてさッ」
ごめんと言いながらも笑い続ける。
笑われているのにも関わらず、本木はの笑い声にホッとした。
その笑い声に乗じて、一際大きな声で本木でいつまで笑ってるんだと叫んだ。
「ごめん、ごめん。私、もう大丈夫だから」
「？」
「本木の聞きたい事、分かったから。心配掛けてごめんね。それとありがとう」
「・・・・」
「でも、何があったかだけは、まだ聞かないで」
「・・・分かった」
「ごめん、これだけはまだ自分でも整理できてないから。いつか自分の中でケリがついたら、ちゃんと話すから」
は、申し訳なさそうな顔をした後、どこかスッキリとしたような顔で話した。
その顔を見て、本木の表情が笑顔になった。
「分かった。でも、これだけは覚えとけ、お前は一人じゃないって事！」
「本木・・」
「俺だっての力になるから。それに隊長だっているんだからな！その事、忘れんなよ！」
「うん！ありがとう」
まだ、少し不安げな、でも昨日とは違う笑顔が返ってきた。
その笑顔を見た後、帰るわと本木はドアに向かった。
「本木！」
「なんだ？」
「好きよ！あなたは私の最高の仲間よ」
「っ！じゃあなっ」
シュッと音がして、本木が出て行った。
少し、赤くなった耳が見えて、はクスクスと笑った。
外では、本木が真っ赤になってるとも知らずに。
05/03/06 （06/11/19 加筆修正）
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