競艇クイーンのお目当て








「うわ〜、すごいわねぇ」
「見てるこっちが恥ずかしいっつーの」
「でもいいんじゃないですか。愛がいっぱいって感じで」
「・・・・・」

『頑張れ憲ちゃん(ハートマーク付き)』の横断幕が風で少し揺れている。
どうやら波多野くんの彼女からのものらしい。

「よかったね、波多野くん。これで賞金王怖いものなしじゃない?」
「嬉しいは嬉しいっスけど、怖いものは沢山ありますよ」

苦笑しながら話す波多野くん。

「何が怖いものが沢山あるだッ、あんな横断幕作ってもらってよー!」
「いてててッ!」

見ていて思わず笑ってしまう。
そして、チラッと和久井さんを伺う。
相変わらず表情が変わらない。
熱心に見ていたら、私の視線に和久井さんが気付いた。

「ん?なにか?」
「あ!いえ、その・・和久井さんもあんな横断幕欲しいとか思うのかなぁと・・」
「はぁ?」

浜岡さんが、目敏く声を上げる。
腕は、まだ波多野くんの首を絞めたまま。

さん、和久井ですよね?」
「えぇ、そうよ」
「・・・・」
「流石さん。言う事が他の人と違う・・」
「えぇ、欲しいですよ」

その一言で、周りの空気が一度下がった。
私はもちろん、浜岡さんも、波多野くんも江上さんも、和久井さんを凝視していた。

「え、和久井さん。今・・なんて・・」
「別に何でもいいんですよ。あの横断幕みたいなのでも」
「まじかよ・・」
「以外だな・・」
「本当ですね・・」

その答えを聞いて、私は暫く考えた後、

「そっか〜、何でもいいのか・・・」
「あの、さん?」

波多野くんが恐る恐ると言った感じで、話しかけてくる。

「何かしら?」
「もしかして、あんな感じの和久井さんバージョンを作るつもりじゃ・・」
「ん〜秘密」

にこッと笑うと、何かを悟ったのかそれ以上は聞いてこなかった。

「と言う訳で、楽しみにしていて下さいね。和久井さん」

少々面食らった顔だった和久井さんが、少し笑って。

「楽しみにしていますよ」

そう返事をしてくれた。

「ったく、ここもくっつくのは時間の問題か」
「あーあー・・俺さんのファンだったのに・・」
「これで、何人ものレーサーが泣くな」




数日後
『頑張れ憲ちゃん』に負けず劣らずの横断幕が貼られ、さらに一週間後、二人はめでたく恋人同士になった。







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