恋について







「恋はいいよな」

それが彼の口癖だった。
けれど、そんな軽い言葉を信じる事が出来なくて。

「恋なんて、しない方がいい」

可愛くない言葉が口をついて出る。

「っとに、素直じゃねぇよな」

可愛くない言葉を言うたびに、返ってくる返事。


素直じゃない。


素直になれたら、どれだけいいだろう。
何度考えたか分からない。

「恋なんて、恋愛なんて辛いだけじゃん・・・」
?」
「恋なんて・・・」

相手の言葉に一喜一憂して、感情に振り回されて。
嬉しい事もあったけど、でも辛い事の方が多かった気がする。
私は、そんな恋愛しかしてない。
暖かい恋愛なんて、経験した事ない。
恋なんて、恋なんて・・・・

ー」
「・・・・・なによ」
「恋ってのは、暖けぇもんだ」
「知ってる。何回も聞いたもん」
「俺は、暖かい気持ちってのを、お前に思い出してほしい」
「慶次?」
「俺と恋しねぇか?」

ニカッと人のいい笑顔で、笑いかけてくる。



恋しねぇか。



そんな言葉を言われたのは、久々で。
どんな風に応えていいのか分からず、俯く。
素直じゃない私。素直になりたい私。

「私は・・・・・こんな性格だし。素直じゃないし」
「おいおい、誰が自分の短所を言えっつたよ」

いきなりの言葉に、苦笑している慶次。
真剣に伝えてくれた彼に言わなくてはいけない。
自分の気持ちを。

「聞いて、慶次」
・・・」
「恋愛とか、愛とかにすごく疎くて、でも本当は・・・・」
、もういい。分かったから」
「慶次」

ぎゅうっと抱きしめられる。
逞しい腕の中にいると心が安心する。

「恋がどれだけいいもんか、俺が教えてやるから」

な?と同意を求められ、こくんと頷く。
ずっと忘れていた気持ち。
愛し愛される事の幸せ。
こんなに暖かく、穏やかな気持ちを思い出すのも、そう遠くない未来のこと。


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