気遣いガール 気遣いボーイ








先輩ッ」
「鳳君」

私に駆け寄ってくるのは、一つしたの鳳長太郎君。
先月、告白されて付き合いだした。
特別な事もなく、毎日を今までと変わらない生活を送っている。

「どうしたの?」
「あ、あの、今日一緒に帰りませんか?」
「え、でも部活は?」
「今日は、榊先生の都合で休みなんです」

にっこりと笑顔で返される。
私はこの笑顔が好きだ。
この笑顔を見ると、ぽわっと心が暖かくなる。

「そうなの?なら、一緒に帰ろうか」
「はい!」
「ん〜、それじゃあ校門で待ってるね」

顔には出さないけど、内心ドキドキで。
一緒に帰った事なんて、今までで数えるほどしかない。
バイバイと手を振りながら、鳳君を見送る。




「すみませんっ!お待たせしちゃって・・・」
「いいよ、いいよ、私もさっき来たところだし。気にしないで?」

笑顔で、答えを返す。
本当は、15分くらい待っていたりする。
もちろん、これは私が早く着すぎたせいなんだけど。
なんて事は、絶対に言わない。
気を遣わせたくないし・・・

「そう、ですか。ならいいですけど・・・」

まだ納得してないと言うか、シュンとしている鳳君。

「本当に、大丈夫だからね?帰ろう?」
「そうですね」

やっと少し、笑ってくれる。

「ねぇ、鳳君」

いつも一人で歩く道を二人で歩く。
それだけで、すごく嬉しい事なんだけど。

「はい、何ですか?」

私と鳳君とじゃ身長差がかなりある。
私は、鳳君を見上げながら話し出す。

「そんなに、気を遣わなくてもいいよ?」
「え?」
「鳳君、いつも私に気を遣ってくれてるでしょう?」
「嫌でしたか?」

苦笑いっていうのかな?
鳳君の、少し歪んだ笑顔。
ズキッと心が痛んだ。

「嫌なんて事ないよっ!ただ、部活とかでも疲れてるのに、そこまでしてもらうの悪いなって」

語尾の方は顔を見てられなくて・・
私は下を向きながら喋った。

「それじゃあ、先輩も俺に気を遣うの止めてくれますか?」
「そ、それは、ダメ」
「どうしてですか?」
「だって、大切だもん」
「俺も、同じです」

顔を上げると、少し照れた鳳君の笑顔が見えた。

「俺も、先輩の事大切なんです。だから、」
「そっか・・大切だからか・・」

呟いて反芻してみる。

先輩?」
「あぁ、ごめんっ!えっと・・ありがとう」
「え?」
「私の事大切だから気を遣ってくれてたんだよね。私が先輩だからだと思ってたの」
「そんな、確かに先輩ですけど、話が別です」
「うん、今のでよく分かったよ。ありがとう」

本当に、嬉しくて。
好きだから、気を遣ってくれていた事。

「あの・・先輩」
「ん?なあに?」

少し言いにくそうに鳳君が話し出す。

「鳳君っての止めませんか?」
「え!それじゃあ鳳君の事呼べないじゃんっ」

鳳君は笑いながら、

「そうじゃなくて、名前で呼んでくれませんかって」
「あぁ、そう言う事かって名前でっ!?」
「はい!」

嬉しそうな顔。
まだ呼ぶと決まった訳じゃないのに。

「・・・それじゃあ、私の事も先輩抜きにして・・くれたら」
さん、ですか?」
「う、うん。そ、それでいいよ・・・長太郎君」

私の今の顔きっと真っ赤になってるに違いない。
ものすごく、顔が熱い。

「ありがとうございます」
「ど、どう致しまして・・・・」

恥ずかしくて、恥ずかしくて顔を上げられない。
ギュッと何かが私の手を掴んだ。

「お、長太郎君?」

チラッと顔を伺うと、

「好きです。さん」
「・・・・ッ!」

せっかく引きかけていた頬の熱が、また舞い戻って。
私の視線はまた、地面に向けられるのです。





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