「おまたせー!」
「遅ぇよ、っ」

待ち合わせの公園で、5分遅れで着いた
遅れたを小突きながらも、登の表情は明るかった。
今日は登の兄であり、警備隊の隊長を務めている石川悠に会いに行く日だった。
この日を登はとても楽しみにしていた。
毎日毎日、兄の話を聞かされ、少し妬いていた所に「お前も来るか」と聞かれ、 は二つ返事で行くと答えた。

「よし、行くか」
「うん!楽しみだね」
「あぁ、久しぶりに兄ちゃんに会えるんだからなっ」

そう言った登の表情は本当に、嬉しそうで。
そんな登を見ながらも嬉しくなった。
は、登の笑顔が好きだった。
どんな時も、登の笑顔を見れば元気になれた。
それは、登も同じ気持ちだった。








警備隊見学










「うわ〜・・・大きいねぇ〜・・・」
「そりゃそうだろ。国会なんだし」
「まぁ、そうなんだけど」

は首を上げながら目の前の建物を見た。
登は、そんなに苦笑しながら行くぞと声を掛け、先に歩き出した。

「ちょ、待ってよ!」
「さっさと来いよ。置いてくぜ?」
ニヤリと笑いながら、明らかに楽しんでいる登。
ムッとしながらも小走りで近寄り、そして止まった。

「登?」
「兄ちゃんっ」
「え!?ちょっと!」

兄の姿を確認するや否や、登は走り出した。
いきなり走り出した登を見て、はどうしようか迷った。
折角の、再開を邪魔するのも嫌だし、かと言ってこのままここにいる訳にもいかない。
少し考えた挙句、はゆっくり歩いていくことにした。

「兄ちゃん!」
「登!元気だったか?」
「登くん、久しぶり」
「出たなッ、岩瀬!!」

少し遠くから登の嬉しそうな顔を見ながら、は苦笑した。
の前じゃ、あんな表情を見せたことがなかった。
少し妬けるなと思いつつも、は徐々に近づいていく。

「登、あちらの方は?」
「あ!いっけねッ、忘れてた!おーい、!」

いきなり名前を呼ばれ、手招きされたは、早足で3人がいる所まで行った。
そして、石川の前で止まり、丁寧にお辞儀をした。

「初めまして、登くんの・・友達のです」
「石川悠です。いつも弟が御世話になっております」

そう言って、石川はぺコッと頭を下げた。
その姿には少し驚いた。
話は、いつも登から聞いてはいたが、こんなに素敵な人だとは思ってもみなかった。

「素敵なお兄さんだねっ」
「あぁ、まぁな」

の予想では、兄を褒められた事により嬉しがる登の笑顔が見られると思ったのだが、それは叶わなかった。
少し、ムスッとした顔で返事をされ、は困惑した。

「登?どうしたの?」
「別に、なんでもねーよ」

バツの悪そうな顔で言われてしまい、はますます困惑した。
さっきまで普通に喋ってたのだ。
がそう思っても仕方ない。
二人のそんな様子に、石川と岩瀬は顔を見合わせて苦笑した。
それから、警備隊見学がスタートした。























「今日は、色々ありがとうございました」
「こちらこそ、楽しい話をありがとう」
、余計な事まで話すんだもんな〜」
「何言ってんのよ、ちゃんと報告しとかないとね」
「チェッ・・・」

そう言って、ブスくれる登に3人は苦笑した。

「それじゃあ、本当にありがとうございました!警備隊のお仕事、頑張ってくださいね」
「ありがとう、じゃあな登。あまり迷惑かけるなよ?」
「んなことしねーよッ・・・・・兄ちゃん、ケガすんなよ・・・」

は、朝と同じくゆっくりと歩き出した。
自分がいるときっと登は素直になれないから。
そう思って、ゆっくりその場から離れようとした時だった。
離れようとしていたの腕を掴み、真っ赤な顔で、

「兄ちゃんッ!は、俺の彼女なんだっ」
「はッ!?」
「登?」
「朝、あいつ俺の友達だって言ったけど、違うから」

は、驚いた。
朝、誰かと聞かれた時、登を気遣って『友達』と答えたのだ。
それなのに、登から『彼女』だと言われるとは思ってもみなかった。

「ちょっと、登っ」
「なんだよ」
「よかったの、言っちゃって・・・」

は、不安そうな顔で登を見た。

「何でだよ。お前は俺の彼女だろ?言っていいに決まってんじゃん」
「登・・・」

ぶっきらぼうな口調で言われた言葉。
の顔も、登と同じく赤くなった。

「登」
「兄ちゃん・・・」
「お前の彼女なら、しっかり守ってやれ」
「おう!」

満面の笑みで答える登。
は、その場を離れるまでずっと下を向いていた。
















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