活力増強剤








私には、夢がある。
世界中の人に、私の歌を聞いてもらう事。

「あ〜あ〜・・・・あー!もうッ!」

かるくハミングしてみるけど、何度やっても納得いかない。

「こんなこと、今まで一度もなかったのに・・・・」

皆は気付いてないみたいだけど、長年歌ってる私には分かる。
それも、自分の声の事だし・・・

「・・・・どうしたらいいだろう・・・」
「おい」

不意に呼ばれて、私は顔を上げる。
今まで青い海だった視界に、ゾロの顔がうつる。

「ゾロ」
「お前何で泣いてんだよ?」
「え?あ・・・」

ゾロに言われて、初めて自分が涙を流しているのに気付く。


「よく、分かんない」
「まだ何にも言ってねぇだろ」
「でも、聞くつもりだったんでしょ?」

憎まれ口ばかりを叩いてしまう。
八つ当たりをしているのは、自分でもよく分かっている。

「何怒ってんだ」
「怒ってない」
「俺の目を見て言え」

言われた通り、ゾロの目を見る。
でも口から出てきたのは、

「・・・納得のいく歌が歌えないの・・・・」
「なんか変だと思ったら」
「気付いてたの?」
「あぁ、まぁな。の事だし」

頭をガシガシ掻きながらゾロが答える。
そして、私の横に来て座った。
私は、視線を海にうつした。

「私、ずっとこのままなのかな」


呼ばれてまた視線をゾロにうつす。

「座れ」
「え?」
「いいから、座れ」

私は言われた通り、その場に座る。
座った瞬間、頭を抱き寄せられた。

「ゾロ?」
「お前なら、大丈夫だ」
「でも、こんなこと初めてでっ、私ッ・・どうしたらいいのか」

ガバッとゾロから離れ、向き直る。
きっと今の私は、縋る様な視線を向けているんだろう。

、お前は何のために歌を歌う」
「何の為って・・・世界中の人に私の歌を聞いてもらう為に」
「なら、こんな事で挫けるな。しっかり前だけ見てろ」
「ゾロ」

真剣な眼差しが私に刺さる。

「今はちょっと調子が悪いだけだろ。心配すんな」

ポンポンと頭を撫でてくれる。

「・・・ありがとう」
「別に礼を言われる様な事は、してねぇよ」

ポフッと自分からゾロに抱きつく。

「ありがとう、私が調子悪いのに気付いてくれて」
「いつも見てるからな。それぐらい分かる」
「そうなの?私と一緒だね」

顔を上げた時、ゾロの顔がアップでうつる。
そして、

「ありがとう」
「礼を言うのはまだ早いぜ?」
「ッ・・・バカ」

ニヤリと笑ったゾロ。
そして私達は、もう一度キスをした。




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