HELP YOU



「飛沫を上げろ、村雨丸ッ!」
ッ!!」

水飛沫が斬魄刀から一斉にあがる。
触れたものを一瞬にして溶かす、液体。

「やめろ、ッ!」
「どいて、恋次ッ!私は彼がッ!」

ザッと村雨丸を振り下ろす。
さらにあがる水飛沫。

「・・ッく!」
「お願い、これ以上邪魔をしないで。恋次っ」
「お・・前、自分が何をしようとしてるのか分かってンのか!!」

恋次の叫び声が響く。

「分かってる、何をしてるのかも、何がしたいかもちゃんとッ!」
「あいつは旅禍なんだ!俺たちの敵なんだよ!」
「敵なんて・・・思ったこと一度もないッ」

言うや否や走り出す。
恋次に捕まらないように。

「待てッ、ッ!」

抜けられたッ、そう思ったのが甘かったのだろうか。
一瞬腕を掴まれたと思ったら、鳩尾に鈍い痛みが走った。

「ぐっ!・・ぅ」

息苦しさと痛みにに、意識が遠のいていく。

「すまねぇ、。だがお前をあいつの所に行かす訳にはいかねぇんだ」
「・・・・雨竜・・」

薄れゆく意識の中で、私は最愛の人の名を呼んだ。





『僕は死神を憎む』

『君が好きだ』

『何があっても、君を助けに行く』

「・・・っ!雨竜ッ」

飛び起き、最初に目に映ったのは、薄暗い天井だった。
ガチャと両手首に重みを感じた。霊圧を封じる手錠。

「よう」

牢越しから、恋次の声が降りかかる。

「恋次・・・」
「やっとお目覚めか」
「・・・・・・どうして」
「あ?」
「どうして、行かせてくれないのッ!?」

心のままに叫ぶ。
死神の私を好きだと言ってくれた、彼の元へ。

。てめぇ、あっちで相当腑抜けになったみてぇだな」

恋次の顔が、不機嫌なものに変わっていく。

「・・・そんなにあいつが好きか」
「・・・・・」
「出会って、たった数ヶ月しか共にしなかった奴が、そんなに大事か」
「・・・大事よ。この命よりも」
「そうか。だったら尚更ここから出す訳にはいかねぇな」
「恋次!」

ガチャンと扉が閉まる。
その扉を、私はただ見ている事しか出来なかった。

「くッ、こんな手錠さえなければッ!」

ガンッと地面に叩きつける。
同時に手首に鈍い痛みが走る。

「雨竜ッ・・・!」

渾身の力を込めて手を振り下ろそうとした時だった。

「バカッ!なにやってんだ!」

ガシッと誰かに手を掴まれた。
振り返らなくても声と霊圧で分かった。

「・・・何しにきたのよ」
「何してるかと思えば、お前」

掴まれていた手を、乱暴に下ろされる。

力ない目で見上げると、困惑した恋次の顔。

、今旅禍は3人捕まってる」
「ッ!」
「場所は地下救護牢〇七五番だ」

言いながら手錠を外す。

「恋次、あ、ありがとうッ」

開いていた牢の扉から外に出る。

「クソッ!」

ガンッと牢の扉を蹴りつける。
ずっとずっと大事に守り続けていた、大切な存在。
それを僅か数ヶ月で他の奴に奪われた。
後悔と怒りが押し寄せる。
だけど、

「俺は、お前に笑ってて欲しいんだ」

そう言いながら恋次は、一人牢を後にした。




「はぁッ、はぁッ」

自分の息遣いと地面を蹴る音しか聞こえない。
叩きつけた手首が、ジンジンと痛む。

雨竜に会える。

そう思えば、痛みも吹き飛ぶくらいだった。


〇七三


〇七四


〇七五


「雨竜ッ!!」
「え、?!どうしてここに」

息を切らしながら、会いたかった人を見つめる。
想像していた通り、驚いた声。
ただその姿は、包帯と痛々しい格好だった。

「よかっ・・・・よかった・・・」

安堵と共に体から力が抜ける。
音を立てて、牢に縋るように膝をつく。

!?」
「大、大丈夫・・、ちょっと疲れただけ」

顔を上げ、にっこりと笑う。
笑顔に雨竜が少しだけ、安心したのが分かった。

「君が無事でよかったよ」
「私も、生きていてくれてよかった」

鉄格子ごしに指を絡める。
一瞬、雨竜の顔が歪んだ様な気がした。

「・・雨竜は、暖かいね」
「そうかな。僕は君の方が温かいと思うけど」

クスッと笑い、頬に軽くキスをした。

「待っててね、必ず助け出すから」


立ち上がった瞬間、雨竜に右手を掴まれた。

「雨竜?」
「頼むから、無茶はしないでくれ」

それは、初めてみる雨竜の顔だった。
胸を締め付けられるような、切ない顔。

「大丈夫、私は必ず戻ってくる。だから信じて待ってて」

腕を放し、走り出した。
彼を助ける為なら、罪を犯したって構わない。
外へ通じる道をただひたすら走り続けた。



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