#1







「えっとぉー・・・貴方はどちら様ですか?」
「・・・・・・・」
「あの、不法侵入で警察に通報しますよ」
「・・・・・・けいさつ?」
「・・・はぁ〜あ」

彼が私の部屋に佇むこと一時間と20分。
状況は全く前に進む気配を見せない。

話は簡単。

仕事から帰ってきた私の部屋に彼がいた。以上。

だけどさっきから一言も話してくれない。
あ、一応一言話したか。
それでも、ここにいる理由とは程遠い。

「あのー、どうしてここにいるのか知りたいんですけど」
「それは俺が知りたい。何故俺はここにいる」
「いや、そう聞かれても」

話が噛み合ってるのか噛み合ってないのか、分からない。
取り合えず、何かしてくる気配もないし、泥棒でもではなさそう。
大切な通帳もカードも全てある。

「はぁ、まぁ・・・いいや。取り合えずここ座ってください」
「俺は主以外の命令は聞かない」
「・・・・・・・・もう勝手にしてください」

この現代になんとも不釣合いな言葉。


主?命令?


何それ。
この人どこぞのクラブの方?
それともヤのつく恐いお兄さん達のお仲間?


「はぁ、頭いたい・・・・あの、適当に出てってくださいね」
「・・・・・・」

返答がないのは一時間前と同じ。
仕事で疲れているのに、この上無口すぎる男の相手は疲れが更に増幅されるだけ。
まぁあ、顔はいいんだけどね。

「取り合えず、コーヒー飲も」
「・・・おい」
「はい?」
「これは、なんだ」

と言って彼が立っている場所を見る。
隣にはテレビ。

「それはテレビって言って・・・・・ってかこのご時世テレビも知らないの?!」
「てれびとはなんだ」

それから数分、なけなしの知識を使ってテレビについて説明する事になったのは言うまでもない。


どうやら彼はこの世界の人間ではないらしい。
服装もなんだかヘンテコだし、首輪みたいなのついてるし。
もしかして飼い犬ならぬ飼い人?いや・・・・犯罪だ。
でも、主とか命令とか言ってたから、ありえなくもないか、も?
けど、あの瞳。どこか淋しそう。

「ねぇ、貴方」
「なんだ」
「行く所あるの?」
「行く場所・・・」
「何?あてでもあるの?もしないなら、少しくらいここにいてもいいよ」

サングラス越しの瞳が赤く光る。
・・・・どことなく洋画の彼を思い出させる。

「現時代を分析。アルカディアではない別の次元と推測する」
「あの・・・独り言?」
「7時間12分前、タナトス出現時に発生した時空の亀裂に巻き込まれた」
「現時点での帰還率は0%。よって、この女の提案が最有力と判断する」

独り言は終ったらしい。
身長差のある私をじっと見下ろしてくる。

「いいのか」
「え?あぁ、居候の話?」
「あぁ」
「うん、いいよ。どうぞ」
「そうか」

それ以上何も言わずに、さっき説明したばかりのテレビに視線を向ける。
どうやら心配していた程、悪い人ではないらしい。
警察も呼ばずに済むと溜息をつく。

「ねぇ、これで何回目になるかな」
「なにがだ」
「名前、教えてくれるでしょ?これから一緒に住むんだから」
「正確には2回目だ」
「あら、記憶力いいのね」
「俺の名前は・・・・ジェット」
「ジェ、ジェット・・・?変わった名前ね。私は
。了解した」










名前を聞くまでジャスト2時間。
警戒心の薄さから始まった、彼との生活は、これからどうなるのだろうか。



















メモ
トリップものです。
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