獄寺くんは、優しい。



それが彼女の口癖だった。












-------------------------------------------------自分と彼女の立場







偶然、本当に偶然聞いてしまった。
彼女の本当の気持ちを。




『獄寺くんって、本当姉さんの事好きだよね』
『いきなりなによ、綱吉』
『だって学校でも姉さんのことばっかりなんだもん、獄寺くん』
『あら、やきもち?』
『はぁ?そんなじゃないって!』
『でも、大丈夫。獄寺くんの一番は綱吉だもん』
『え?』
『獄寺くんは私の事が好きなんじゃないから』
『え、ちょっと姉さん何言って・・・』


一連のやり取りをドアの向こう側で聞いてしまった。



『獄寺くんは私の事が好きなんじゃないから』



あれは、どういう意味だろう。
好きだと言って、玉砕覚悟で告白したあの日。
驚いていたけど、笑顔で頷いてくれて嬉しかったのに。

それなのに・・・・・伝わっていなかった。




「く・・・ッお姉さま!!」
「ご、獄寺くん?!」

居てもたってもいられなくなって、ドアを蹴破る勢いで開ける。
向かい合う形で座る二人。

「・・・・・さっきの話し聞きました。好きなんじゃないってなんですか?」
「・・・・・」
「っ・・・答えてください」

いきなり始まったやり取りに焦る十代目。

「えーーっと、お、俺チビ達と遊んでくるから」
「気をつけてね」
「え?あ・・・うん」

俺の問いには答えず、十代目を気遣う彼女。
さらに戸惑いの瞳を濃くして、十代目が部屋を出られた。
しんと静かになる部屋に、俺と彼女の二人。

「あの、俺は本当に好きなんです」
「知ってるよ」
「じゃ・・・じゃなんであんな事言ったんですか!!」

俯く彼女を他所に声を荒げる。
伝わらない、どこかすれ違う気持ちに苛立ちが募る。
そして何も言わない彼女にも。

「獄寺くんは、私が好きなの?それとも・・・」

「なっ!」

衝撃に目を丸くする。
彼女の言葉が胸に刺さる。




それとも、十代目の姉だから好きなの?




「・・・お姉さま」
「ほら」
「え?」
「私の事、お姉さまって呼ぶじゃない」
「そ、それは」
「綱吉の姉だからでしょう?」
「ま、待ってください!」

俺の脇を通って部屋を出て行こうとする彼女の腕を掴む。
彼女は振り返ってくれない。

「さ、最初は確かに『十代目のお姉さま』って思ってました」

みっともなく声が震える。
これで言ってもダメだったら、どうしようと。
柄にもなく不安が募る。
そんな不安を振り払うように、ぐっと掴んだ腕に力を込める。

「けど、だんだんそれだけじゃない感情が溢れて、気付いたら好きだった」
「・・・・・」
「貴女は十代目の大切な家族。ボスの家族に手を出すなんて言語道断です」
「・・・・」
「だから俺は一つ誓いを立てました」
「・・・・・・」
「『お姉さま』と呼ぼうと。誰を好きなのか、忘れないようにしようと」
「・・・・・・・なに、それ」
「それが貴女を不安にさせてしまった」
「・・・・・」
「すみません」
「・・・・・・獄、寺くんは、優しすぎるよ」

やっと振り向いてくれた彼女の瞳は、今にも零れそうに涙が溢れていた。

「ごめんなさいッ」

腕を掴んでいた手に手を重ねる。
その上に、ポタポタと落ちる涙。

「お、姉さまッ?!」
「ごめんね、獄寺くんっ・・私・・・・怖かったの」

吐き出された言葉と涙にチクチク胸が痛む。

「すみません」

泣かないでください。と涙を拭う。
その手を取って貴女が囁く。

「・・・ねぇ、名前呼んで?」
「え・・・」
「名前、呼んで欲しい」

一瞬、迷った。
けれど、最愛の人を悲しませるのは本意ではない。
本当にすみません!十代目!
けれど、俺は彼女が好きなんです。

さん」
「・・・・やっと呼んでくれた」
「好きです、さん」
「ありがとう、私も大好き」

心底嬉しそうな笑みを向けられて、首に回る腕。
ふわりと鼻腔をくすぐる優しい香に胸は高鳴る。








「愛してます」




















メモ
隼人ー!
真面目な彼は、この後十代目に土下座してるでしょう。

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