私のお隣さんは、小さな病院。
子供の頃から、よくお世話になっている。
「お姉ちゃーんっ!!」
可愛らしいワンピースを翻し、走ってくるのは黒崎遊子ちゃん。
「おはよう」
「おはようっ、今日もお花満開だね」
にっこりと可愛らしい笑顔に、私も笑顔になる。
「ゆずっ、姉っ」
遊子ちゃんとは対象的で、ボーイッシュな格好。
この女の子は、黒崎夏梨ちゃん。
「おはよう、姉」
「おはよう、二人とも相変わらず元気だね」
話しながら、花に水をやる。
「姉だって、いつもと変わんないじゃん」
「だね」
三人でクスクス笑う。
「ほら二人とも、遅刻しちゃうよ」
「本当だ!夏梨ちゃん、行こうっ」
「わっ、ゆず!引っ張んなくても大丈夫だから」
「じゃ、お姉ちゃん、行ってきまーす!」
「はい、いってらっしゃい」
二人の元気な後ろ姿に笑みがこぼれる。
これが、私の朝の日課。
「何笑ってんだ?」
「わっ!?」
いきなり聞こえた声に、私は勢いよく体を向けた。
手に持っていたじょうろと一緒に。
「つめてっ!」
パシャと水音がして、じょうろの中の水が跳ねた。
お陰でその水は、一護くんにかかって。
「一護くんっ?!ごめんね、大丈夫?!」
「あー、朝から水を掛けられるとは思ってなかったぜ」
オレンジ色の髪から滴が落ちる。
「今、タオル持ってくるからっ」
手に持っていたじょうろを置いて、私は急いで洗面所に向かった。
洗い立てのタオルを引っつかんで、庭に戻る。
「本当にごめんねぇ・・・」
タオルでワシャワシャと頭を拭く。
「別にいいって。後ろから声かけた俺も俺だしな」
タオルから除く苦笑。
気遣ってくれるが、やっぱり少し納得がいかない。
「うん・・・あ、制服もちょっと濡れちゃったね」
「この天気だし、すぐ乾くだろ」
私の手が離れた隙に、空を仰ぐ。
水で濡れたオレンジの髪が、日の光でキラキラと輝いていた。
「それにしても、ビックリしたぁ」
「悪かったな、驚かせて」
「ううん、私の方こそごめんね」
まだ一護くんの頭に乗ったままのタオルに手を伸ばす。
「まだ濡れてるね」
やわらかい髪を触ると、まだ少し濡れていた。
タオルと髪の毛を行き来する手。
「サン」
「なぁに?改まって」
私の視線は、一護くんの髪の毛に集中していて。
「わりィ」
「何が・・・・っ!?」
最後まで言えなかった。
否、言わせてもらえなかった。
唇を塞がれたから。
短い短い、触れるだけのキス。
「いっ、一護くん!」
真っ赤になっているだろう頬。
口元を覆いながら、抗議の声を上げる。
「だから、先に謝ったじゃねーか」
ニヤリと笑われ、私はさらに赤くなる。
そんなの、聞いてない。
金魚の様に、口をパクパクさせるしかなかった。
「じゃ、行ってくるわ。タオルサンキューな」
「あ、ど、どう・・・いたしまして」
タオルを受け取り、悠々と歩いていく後ろ姿を見る。
「・・・・・いきなりは、なしでしょう?・・・」
ヘタリと座り込み、私はこれからどうしたらいいのか、そればかり考えていた。
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