半 月
「・・・・・ぅ゛ー」
この白い建物に連れてこられて何時間経っただろう。
未だに私の声は出ない。
「・・・あ゛ー・・・っ」
どうしたら治るのかな。
ここに来るまでは声ちゃんと出てたのに。
「・・・・」
理由は何となく分かっている。
藍染様とかいう人に会ってからだ。
それから声が出なくなった。
「・・・・・っ!ーっ!」
無理に声を出していたからだろう、その唸り声すら出なくなった。
その時、部屋のドアのノックと共に一人の青年。
「その様子だと、まだ声は出ないのですね」
控えめな声、だけれど気遣う雰囲気はない。
その言葉に頷くだけ。
「藍染様がお呼びです」
「・・・・・?」
自分を指差して首を傾げる。
私に?一体なんの用事なのだろうか。
『何の用ですか?本当に私?』
紙にサラサラと文字を書く。
「はい、貴女に御用があると」
『・・・行かないとダメですか?』
「もちろんです。藍染様の命令は絶対です」
「・・・・・」
その言葉を聞き、拒否権はなくなった。
「よろしいですか?」
頷いて立ち上がる。
彼の後ろを歩いて向かう先は、ここの人たちが慕う藍染様のところ。
「藍染様、お連れいたしました」
異様な雰囲気の場所。
直感で感じた。ここはとても恐ろしい場所。
「ご苦労だったね」
優しく響く声も、私にとっては悪魔の囁きと同じ。
いや、それ以上かもしれない。
「・・・・なにか」
「・・・・・っ」
傍にいる青年の服を掴む。
少し驚いたような、怪訝そうな顔が映る。
だけど、それよりも、この場所は恐い。
私一人でいるなんて、とてもじゃないが耐えられない。
「僕に掴まってないで、藍染様の元にどうぞ」
「っ!・・・!」
首がちぎれんばかりに横に振る。
膝が震えて、ちゃんと立ってられない。
「いい加減に・・・」
「私はそのままでも構わないよ」
「は、しかし・・・」
「それに、彼女はどうやら怯えているようだね」
彼らの言葉すら耳に入らない。
恐い・・・恐い!!
早くこの場所から離れたくて仕方なかった。
「分かりました」
ぐいっと腰に手が回される。
驚いて見上げるとキツイ眼差しの青年。
そのまま横から支えられる。
「さて、君の名前を聞かせてもらおうかな」
「・・・・・・っ、」
見下ろす視線が冷たくて、逆らう事すら出来ない。
冷たくなった指先を青年の服から離すと、震える手で名前を書く。
『・・・』
「、君は言霊の力を信じるかい?」
「・・・・・」
それから暫く藍染様の言葉を聞いていた。
正直、信じられなかった。
私には、言霊を操る能力があるらしい。
私が発する言葉で人が死に、人が蘇る。
そんなおかしな話があるわけがない。
人が死ぬ事に関しては、まぁ・・・・ありそうだと言えばそうだ。
けれど、人が生き返るなんて事は絶対にありえない。
そうでなければ、万物の輪廻がおかしな事になる。
『私にはそんな力ありません』
「それは君が知らないだけだ」
『だけど』
「君がどうして声が出ないのか分かるか?」
『分かりません』
「言霊を操る者故の、予防策だよ」
ニヤリと深まる笑み。
「ご苦労だったね。、今日は疲れただろう、ゆっくり休むといい」
「・・・・・・ぅ」
「!?」
その言葉を最後に、私はすり減らした神経を開放した。
重くなる瞳が閉じる瞬間、話し声と腰に力が篭るのが分かった。
メモ
なんとなく、繋がってます。
そして、何となく不明感がいっぱいです
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