Chanson de l'adieu








本当は、士官学校なんて行ってほしくなかったの。

でも、軍に入るのはきっと貴方の目標だと思ったから。

だから、笑顔で送り出そうとしたのに。






アカデミーに入学が決まった時、あいつは何も言わなかった。

ただ笑って「よかったね、おめでとう」と言ったんだ。

だけど、それが俺には不満だった。









「イザーク、いってらっしゃい」
「・・・・・・・・」
「あんまり、喧嘩とかしちゃだめだよ?」
「・・・・・・・・」
「イザーク短気だから」
「・・・・・・・・」
「イザーク?」


何を言っても何も言わないイザーク。
名前を呼んでみると、やっと私を見た。
とても、不服そうな顔で。


「どうしたの?」
「何故・・・・・・どうして何も言わないッ!!」
「イ、イザーク?」


ギンッと睨まれて、私は少したじろぐ。
怒鳴られる理由に心当たりはない。
けど、迫力に圧されてしまう。


「貴様、本当に俺がいなくなっていいのか!?」
「イザーク・・・・・」
「どうしてッ!お前はいつもそうだな。肝心な所で自分を殺す!」
「・・・・・・・」
ッ!」


イザークの言葉に、唇を噛み俯く。
溢れる想いを必死で抑えるように。


「なんとか言えッ!!」


何も言わない私に、イザークがさらに怒鳴る。


「・・・・・・・・どうして」


グッと堪えようとしたけれど、もう我慢の限界だった。
涙の溢れる瞳で、イザークを睨む。


「どうして、そんなこと言うのよッ!!」

「行かないでって言ったら、傍に居てくれるの!?」
「・・・・・・」
「軍になんて入らないでって言ったら、その通りにしてくれるの!?違うでしょッ!?」
「・・・・・・」
「だから、だからっ・・・・黙って、笑顔で見送ろうと思ってたのに!!」
「・・・それがお前の本心か」


ハラリと頬を涙が伝う。
それを拭いもせず、イザークを見る。


「そうよ・・・・これが、私の本心よッ!」
「なら、最初から我慢なんてしないで、そう言えッ、このバカ」


その瞬間、暖かい腕に抱かれる。


「俺は、そんな笑顔なんて見たくない。ありのままのお前で見送ってほしい」
「イザークッ」
「泣いてもいい、だから無理に笑うな」
「ひっく・・・・・・・・い、行かないでっ」
「あぁ」
「傍にいてよ、イザークぅ・・・っ」


ぎゅうっと服を握り締め、泣きじゃくる。
その間、ずっと抱きしめていてくれた腕。
この腕と会えなくなると思うと、辛くてたまらない。


「イザーク」
、手を出せ」
「手?・・・・こう?」


言われたとおりに、手を差し出す。
コロンと銀色の何か。


「・・・・・・指、輪?」


シンプルで綺麗な指輪。
イザークの様だと、思った。


「それが、俺の変わりだ」
「え?」


フンっと、偉そうないつものイザークに戻る。
交互に、指輪とイザークを見る。


「なんだ、文句でもあるのか?」
「ない、けど・・・・この指輪」
「卒業するまでと、卒業してからの代わりだ」
「イ、ザーク」


嬉しかった。
こんなにも、私の事を考えてくれている人がいて。
さっきとは違う涙が溢れてくる。


「ありがとう、イザークッ」
「フン」


ふいっとそっぽを向く。


「じゃ、俺はもう行くからな」


荷物を持って、くるりと後ろを向く。


「イザーク」
「なんだ」


振り返るイザークに、心からの笑顔で、







「いってらっしゃい、気をつけてね」


















(Chanson de l'adieu=別れの曲/ショパン)









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