今日も、私は1番ドックに通う





大工職長の恋人








「今日も皆頑張ってるな〜」

はひょこっと1番ドックの中を覗く。
邪魔をしたらまずいと、いつも1番ドックの入り口付近から中の様子を見ている。
木を削る音や、叩く音。
はこの音が大好きだった。
子供の頃から、聞いていた音。

「ん?じゃねぇか」
「あ、パウリーさん。お疲れ様です!」
「あぁ、って今日も、か?」
「えへへ・・・」

は恥ずかしそうに笑いながら、こくんと頷いた。
は、毎日ここに来ては、中の様子を眺めている。
昔は、船が出来上がる工程や音を聞くのがが目的だった。
しかし今では、それともう一つ、


「カクさんっ」

の最愛の人。
カクを見るために、1番ドックに毎日通っているのだ。

「お疲れ様です」
「あぁ、ありがとう」

満面の笑みでは言った。
の微笑みに、カクはかぶっていた帽子をさらに深くかぶった。
お陰で、からはカクの鼻しか見えない。

「カクさーん、そんなに深く被ったら顔が見えないですよ〜」
「いいんじゃよ」
「よくないですよ〜!カクさんの顔見に来てるのに・・・」
?」

語尾が小さくなり、は下を向いた。
泣いているのかと思ったカクは、少し慌てての名前を呼ぶ。
カクがの顔を覗き込んだ瞬間。

「・・・・ッ?!」
「カクさんの帽子とっちゃった〜」
・・・」
「驚かせて、ごめんなさい。でもどうしても見たかったから」

そう言って、カクに帽子を返す。
笑っているが、どこか寂しそうな笑顔だった。

「もう、お仕事に戻らないといけませんよね?頑張ってくださいね!」

振り返り、ドックから出て行こうとした時、

「えっ?」

の腕を、カクが掴んだ。

「カクさん?」

首を傾げ、不思議そうな顔でカクを見る

「明日もまた、来るんじゃろ?」
「あ、はい!そのつもりですけど・・やっぱりお邪魔ですか?」

不安げにが尋ねる。

「いいや。そんなことはない」
「そっか、よかった」

心底安心したようにがポツリと漏らす。

、明日の昼は暇か?」
「お昼ですか?暇ですよ?」
「なら、一緒に昼飯を食べんか?」
「カクさん・・・はい、一緒に食べましょう!」
「決定じゃな」

嬉しそうに笑うからは、先ほどの寂しそうな顔は消えていた。
それを見たカクは、の頭を撫でながら、微笑んだ。


「それじゃあ、また明日」
「あぁ、待っておる」

そう言って、は1番ドックを後にした。
後には、カクとパウリーが残された。

「なんじゃ?」
「い、いや。別に・・・」

そうか、と言って、カクは自分の作業に戻った。
一人残されたパウリーはがしがしと頭を掻きながら、

「毎日、毎日よくやるよなぁ、本当。付き合いだして2年も経つのによ」

いまだに、付き合った当初の様に初々しい二人に、パウリーは大きく溜息をついた。



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