11月9日
それは、私にとって大切な日







貴方と共に









「九郎さーん?」

障子を開けて、九郎さんを探す。
けれど開けた先には、探している本人は見当たらなくて。

「おかしいなぁ・・・どこに行っちゃったんだろう」

うーんと唸りながら、九郎が行きそうな場所を探す。

「どっかに出掛けてるのかな?」

考え抜いた末に出した答えは、案外単純なもので。
望美は、取り敢えず神泉苑に向かって歩き出した。



「ん〜、ここにも居ないかぁ・・・」

キョロキョロと周りを見回すが、目当ての人は見つからない。

「もう、どこいっちゃったんだろう。肝心な時に見つからないんだから」

ブツブツと呟きながら歩いていた。
すぐ足元に小石がある事にも気付かずに。
考える事に集中している望美の目には、その小石が映らなかった。

「あとはー・・・きゃッ!」
「危ない!」

こける!と思った望美は、ギュッと目を閉じ、次に訪れる衝撃に備えた。
だが、待てども待てども衝撃はやってこなかった。

「ったく、しっかり前を見て歩け」
「え、く、九郎さん?」

ゆっくり目を開け、自分を支えている相手を見つめる。

「また考え事でもしてたのか?」
「あ、九郎さんが助けてくれたんですか?」
「俺以外に誰がいるんだ」
「あはっ、そうですよね」

クスクスと笑いながら九郎から離れ、自分の足で立つ。

「支えてくれて、ありがとうございました」
「礼を言われる事じゃないさ。お前に怪我がなくてよかった」

ふわりと微笑みを向けられる。
ストレートな言葉と微笑みに、望美は恥ずかしくなった。
いつもなら手を繋ぐだけでも慌てふためくくせに、時々やけにストレートな発言をする。
その無意識の言葉にどれだけ心が揺さぶられるか、きっと九郎は知らない。

「だ、大丈夫ですよ。大げさだなぁ」

照れ隠しに、わざと明るく声を出す。

「それはそうと、何でここにいるんだ?」
「あ、そうでした!私九郎さんを探してたんですよっ」

本来の目的を思い出す。
探していたと言うと、九郎は不思議そうな顔をした。

「俺を?」
「はい!どうしても言いたい事があって」
「言いたい事?」

少々怪訝そうな顔になる九郎。
それをよそに望美は嬉しそうな顔で一言、

「九郎さん、誕生日おめでとうございます!」

にっこりと笑顔で、一番言いたかった事・・・お祝いの言葉を本人に告げた。

「誕、生日・・・・あぁ、そう言えば今日は俺の誕生日だったな」
「え、九郎さん。忘れてたんですか?」
「あぁ。最近はそれどころじゃなかったからな」

笑い声と共に、返事が返ってくる。

「そうですね。戦とか怨霊とかで大変でしたもんね」
「バカ、今も大変だろうが」
「まぁ、そうですけど」

律儀に訂正してくる彼に、苦笑する。

「まぁ、でも礼は言う。ありがとな」
「どう致しまして」

嬉しそうに笑う九郎に、望美も笑顔になる。

「本当は、プレゼントが用意出来ればよかったんですけど・・・」
「ぷれ・・・なんだそれは?」
「贈り物のことですよ」
「なんだ、そうなのか。別になくても俺は構わないが」
「私が構うんですよ」

シュンと俯く望美。
俯く望美の頭に、ポンと九郎の手がのせられた。
顔を上げると、そこには優しく笑う九郎の顔があった。

「そんな顔をするな。祝いの言葉だけで俺は嬉しいから」
「でも、」
「そ、そんなに気になるなら、だな、その・・・」
「九郎さん?」

いきなり口篭る九郎を、望美は不思議そうな顔で見る。

「その・・・今日が終わるまで、ずっと・・・」
「ずっと?」
「ずっと・・・・い、一緒に居てくれるか?」

顔を朱に染めながら、たどたどしく九郎が言葉を紡ぎだす。

「・・・プッ」

堪えきれなくなり望美は噴出した。

「なッ!お前!」
「あははッ、ごめんなさいっ」
「人が決死の思いで言った言葉をお前・・・っ」
「だって、そんな事言わなくても、私はいつも九郎さんの傍にいますから」
「ッ・・・望美」

にっこり笑いながら、望美が話す。

「九郎さんが望む限り、私は九郎さんの傍にいます」
「・・・本当にいいんだな?」
「いいって、自分で決めたんですよ。いいに決まってるじゃないですか」
「俺は、お前を手放すつもりはないぞ」

そう言って、ぎゅっと望美を抱きしめる。

「九郎さん」
「好きだ。お前だけは何があっても必ず守る」
「私も九郎さんが好きです」

抱きしめる九郎に、望美は体を預ける。
そしてどちらからともなく、唇を重ねた。
二人の唇が離れた一瞬に望美は、祝いの言葉を唇にのせた。

「九郎さん、誕生日おめでとう」

見上げると、嬉しそうに微笑む九郎の顔が映った。
その微笑を見て、二人はまたキスをした。




















ありきたりな感じで申し訳ないです。
誕生日なので、普段より糖分多めにしてみました(笑)
九郎さん誕生日おめでとう!




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