「イザーク、別れよう」










Amazing Grace














淡々とした声で告げる。
涙も、笑顔もなにもない表情で。


「・・・・・・・は」


イザークはやっと声が出せたって感じだった。
信じられないとでも言うような顔。


「冗談にしては、笑えんな」
「冗談なんかじゃないよ」
「・・・理由は」


ギロリと睨まれる。
そんなに怖い顔をしないでよ。


「・・・・・・」

「ごめん・・・も、好きじゃない」
「・・・・・・・」


私は嘘つきだ。
本当は、まだ大好きで。
今だって、こんな事言うのすごく辛い。
けれど、事実を知ってしまったらイザークに迷惑がかかる。


「イザー、」
「好きにしろ」


今まで私を見ていた瞳が、背中を向ける。
途端に、涙が溢れてきた。


「っ・・めんッ、ごめん・・・さいッ」


しゃくり上げる声で、上手く話すことができない。
けれど、私が泣いてもイザークは背中を向けたままで。
あぁ、もう終わりなんだと思った。
自分から別れを切り出しておいて、結局はまだ好きで。


「今まで・・・ありがとう」


それだけを言って、ドアに向かって歩く。


「おい」


出て行く直前、足を止める。


「何を隠している」


ギョッとして、振り返る。
アイスブルーの瞳と合う。


「な、にも、隠してない」
「嘘をつくな」
「本当よッ」


揺るがない瞳に、焦る。
ムキになって言い返すけれど、どれもイザークの瞳には勝てない。


「じゃ、その腹の子はなんだ」
「・・・・・・・・ッ」


自分で、血の気が引くのが分かった。
震える手で、お腹に触れる。



「し・・・・知って・・・」
「あぁ、医療スタッフに問い詰めて吐かせた」


しれッと言いのける彼は、もういつもの彼で。


「子供なんて・・・欲しく、ないでしょ?」


震える唇。


「どうせ、イザークだって・・・同じでしょ!」
?」
「子供が出来れば、いらないって捨てるんでしょ!?」
「おいッ」
「うるさい!イザークなんてッ」
!!」


塞がれた言葉。
触れる暖かい、唇。


「少し落ち着け」
「あ、イザーク・・・」
「誰が、欲しくないと言った」
「・・・でも」
「好きな女との子供を、誰が欲しがらない」
「イザーク」


ぎゅっと抱きしめられたまま、優しい声が聞こえる。
嬉しかった。
また、捨てられるのかと思ったから。
それならいっそ、自分から切り離そうと考えた。
浅はかな自分。


「他の奴は知らんが、俺は違う」
「イザ」
「愛している」
「ッ」


しがみ付き、声を上げて泣く。
後から後から溢れる涙。
それをすべて受け取ってくれるイザーク。


「二度と、別れるなんて言うなよ」
「うん、うんッ」


涙で濡れる瞳を上げて、愛しい人を見る。
少し怒った顔。


「イザーク、愛してる」
「あぁ」























数ヵ月後、私は男の子を出産した。
アスランからは、目つきがイザークだと言われ、
ディアッカからは、女の子なら似だったのになとチャカされ、
キラからは、よかったねの微笑を贈られ、
ラクスやカガリからは抱えきれない程のおもちゃや洋服、
そして、イザークからは、
「俺とお前に似て、逞しい子になるだろうな」
優しい微笑みと、嬉し涙を。










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