place in the sun. 7








久しぶりに会った彼の顔には、大きな傷が残っていた。

「・・・・・・ッ!」
「なんだ、その顔は」
「イザークさん・・・その怪我」

見るなと言わんばかりに、顔を背ける。
深く傷跡の残った顔の傷。

「どうして・・・そんな」
「関係ないだろ」
「けれど、あの・・・痛くないですか?」
「あぁ」

ぶっきら棒な声が返ってくる。
私が慌てても、顔を歪めても彼の傷が消える訳でもない。

「・・・・・・・おい」
「・・はい」
「少し、話がしたい」
「はい、分りました」

こちらへと、中庭へ案内する。
一面に海が広がる。
ここから見える景色が、私もお姉さまも好きだった。
だから、よくここで日が暮れるまで話をした。

「ここが私の自慢の庭です」
「そうか」

少し表情を緩めたと思ったら、すぐに眉間に皺がよる。
今日は難しい顔しか見ていない。

「お前は、地球軍の事どう思う」
「・・・・・正直分りません。どちらが悪くてどちらが良いのか私にはまだ分りません」
「・・・・・・」
「己の立場によっては、どちらも正義なのだと思います」
「・・・・正義、だと?」

途端に彼の目尻が釣りあがる。

「地球軍が正義など、そんなはずあるかッ!!」
「イ、イザークさん?」
「あいつは・・・ニコルは、ストライクに撃たれたんだぞッ!?そんな正義あってたまるかッ!」
「イザークさん・・・」

私の家に来た時から、少しおかしかった。
どこがおかしいのかは分らなかった。
けど、今少し分かった気がした。

「イザークさん」
「・・・・クソッ!」

逸らされた視線が一瞬揺らいだ気がした。
私に出来る事、それはただ傍に居ること。
それだけしか出来ない自分が、とても役立たずに思えた。

「ごめんなさい。私には・・・・貴方の傷を癒す事は出来ません」

彼の瞳がみるみる内に丸く見開かれる。
とても不器用で、とても素直でそして誰よりも優しい人。
そんな彼がこんな風に悲しみを抱えている。
それが、とても悲しかった。

「だけど、今は私しかいません。言いたい事があるなら全部聞きます」
「私には特別な力はありません。けど貴方の為に何かしたい。だから」

だから、その後に続く言葉が出てこなかった。
暫くの沈黙の後、イザークさんが口を開いた。

「・・・ニコルは俺達の仲間だった」
「はい」
「アスランを庇って、ストライクに撃たれたんだ」
「・・・はい」
「まだ、15だったんだぞ!どうして・・・・ッ」

地面に拳を叩きつけると、そのまま顔を膝に埋めた。
いつもよりも小さく見える背中に、そっと手を乗せる。

「悲しい時は、泣いてください」

嗚咽も聞こえなかった。
けれど、乗せた手から震えが伝わってきたから。

「イザークさん」

少しでも彼の心が安らぐように、優しく背を撫でる。
いつしか、私の瞳からも涙が零れていた。
















「すみません、私まで泣いたりして」
「別に」
「あの、やっぱり私にはどちらも正義なんだと思います」
「・・・・・・」
「ザフトにはザフトの。地球軍には地球軍の正義が」
「だが、俺はこの傷と、ニコルを撃ったアイツらを許す事はできない」

低く憎しみの篭った声。

「・・・はい」

その声に、返事をする事しかできなかった。

「きっと会うのはこれが最後だ」
「えッ?」

彼の言葉に、目を見開く。

「俺達は宇宙に上がる」
「・・・・・」

何も言えなかった。

初めて会った時は、ただビクビクしていただけなのに。
それから彼の優しさを知って。
ぶっきら棒でも、不器用でも心配してくれるのがよく分った。
私の事を考えてくれるその想いが、とても嬉しかった。

だから、

会えなくなるのは、辛い。
いつしか、私の心の大半を占める彼への想い。

「あの、イザークさん」
「なんだ」
「あの、これを・・・」

そう言って、首にかけていた首飾りを渡す。
小さな蒼い石のついた首飾り。

「なんだ、これは」
「私の大切なものです」
「バカかお前は!そんな物受け取れるわけ無いだろう!」

予想通りの反応。
だけど、これだけは絶対に譲れない。

「イザークさんに持っていてもらいたいんです。お守り」
「お守り?」
「はい、お守りです」

にこりと小さく笑みを作る。

これは私の我侭かもしれない。
けど、少しでもいい。一瞬でもいい。
私を思い出してほしい。

「分った。ただし」
「ただし?」
「この戦争が終わったら返しにくる。覚えておけよ」
「はいっ。その時を心待ちにしてます」

その言葉が、スッと心に染み渡る。
あぁ、もう大丈夫だ。

「じゃ、俺は戻る」
「はい。次会う時は、戦争が終わってることを願って」
「あぁ」

玄関から、そして後姿が見えなくなるまで見送って。
部屋に戻った。
軽くなった胸元を押さえながら。



















メモ

色々まとまりがないですね・・・
精進精進。
ところで、地球軍で合ってましたっけ?
初代の名残が。


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