断片(プラグメント)









病院の独特の匂いのする中で、私は一人考えていた。

一体どうしてこうなったのか。
一体何がいけなかったのか。

頭で考えても、答えは見つからない。
私は、病室のベッドに横になりながら、真っ白い天井を見ていた。
と、言うより睨んでいたに近かったのかもしれない。



考え事をしていた顔のまま、私は声の主を見た。

「お前、眉間にしわが寄ってるぞ」
「陽一お兄ちゃん・・・」

私の顔を見ながら、苦笑いを浮かべている。
苦笑いというよりも、少し辛そうな顔。

「ほら、ゼリー。下の売店で買ってきたぞ」

陽一お兄ちゃんの後ろから、ゼリーを渡してくれる大ちゃん。

「ありがとう・・・」

ゼリーを受け取り、サイドボードの上に置く。

「広海お兄ちゃんは・・・?」

そう言うと、後で来ると陽一お兄ちゃんが教えてくれた。

部活の練習中。
突然私と榎先輩を襲った悲劇。
広海お兄ちゃんが、西崎先輩を止めてくれなきゃ、きっとここにはいなかった。
皆は、私や榎先輩の事を被害者だっていう。
だけど、一番の被害者は・・・・

っ、大丈夫か?」

走って来たのか、少し息が上がっている広海お兄ちゃんが入ってきた。

「大丈夫って、大丈夫だよ」

軽く笑いながら答える。

「そっか、ならよかった」

心底安心したように、広海お兄ちゃんの顔が緩む。

「広海お兄ちゃん・・・」
「ん?なんだ?」
「ごめんね、全国行けなくなって・・・」

一瞬、空気が凍るのが分かった。
私の言葉に広海お兄ちゃんだけでなく、大ちゃんや陽一お兄ちゃんまでもが固まる。

、お前、何・・・言ってんだよ」
「ずっと思ってた事」
「お前が悪いんじゃねぇっ!悪いのはっ、西崎の野郎じゃねぇかっ!」

広海お兄ちゃんが怒鳴る。

「ありがとう」

こんな時には似合わない、不釣合いな笑顔。

「何でだよッ!っ」
「広海・・お兄ちゃん・・?」

苦々しい表情で私を、抱きしめる。
強く、強く。
抱きしめてくれる腕から、広海お兄ちゃんの想いが伝わってきて・・・

「広海お兄ちゃんっ・・・っ」

その時、初めて私は泣いた。
もちろんその涙は、自分の為の涙じゃない。
苦い顔の陽一お兄ちゃんや、今にも壁を殴りそうな大ちゃん。
そして、

「なつみ達の所為じゃないから」

そう言い続けてくれる、広海お兄ちゃんの為。



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