どうすれば伝えられる?
私とあの人では、きっと世界が違うんだろう。
私はお客で、あの人は選手。
だから、この想いもきっと身の程知らずなんだと思う。
だけど、ずっと見てきたから。
やっぱり、大好きで・・・
そう簡単には消えてくれそうにない、想い。
この想い、どうしたら伝えられる?
あいつは、俺のファンだって言ってくれた。
俺の出るレースには、必ず見に来てくれる。
レース後に見せる、笑顔。
あぁ、可愛いなって正直に思った。
まぁ、口には出してねぇけどな。
それでも、あいつはただのファンで、俺は選手で。
クソッ、いつからこんなに考える様になったんだ・・・
この気持ちどうしたら、あいつに分かってもらえるんだ?
「浜岡さんッ、お疲れ様でした〜っ」
「おう、毎度毎度サンキューなっ」
「いいえ、私が好きでしてることですし」
今日も笑顔でお疲れ様を言う。
もし、思い出してくれる時があれば、やっぱり笑顔の方がいいから。
だから、私は笑顔を絶やさない。
「浜岡さん、次のレースは若松ですよね?」
「おう、って相変わらず情報早ぇなぁ」
苦笑しながらも、どこか嬉しそうで。
自意識過剰かもしれないけど、やっぱり嬉しい。
「若松にも応援に行きたいんですけどね・・・」
「おいおい、そこまで無理しなくていいって」
「・・・・はい」
私の今の顔はきっと不服そうな顔。
「立ち話もなんだし、どっか行くか?」
「えっ!?いいんですか?」
浜岡さんからのお誘い。
もちろん、そんなの初めてで。
「あ?いいに決まってんだろ」
笑顔で返されて言葉も出ない。
嬉しかった。けど・・・
「それは、私が浜岡さんのファンだから・・・ですか?」
「は?何言ってんだ?」
先ほどまでの笑顔が消えて、怪訝そうな顔になる。
「それもファンサービスみたいなものですか?」
下を向きながら、顔を見ることなく話す。
こんな事言いたいわけじゃないのに・・・
私の気持ちなんてお構いなしに、口は動く。
「・・・ファンサービスだと思ってんのか?」
明らかに機嫌の悪そうな声。
「そうじゃないんですかっ?それ以外に浜岡さんが私と出掛ける理由がないじゃないですかっ」
今まで抑えていた想いが溢れだす。
感情のままに喋ると、ろくな事がないって分かってるのに。
「出掛けるのに理由が要るのかよ?」
「・・・・そういう訳じゃないですけど・・・」
「なら別にいいじゃねぇか」
「でも、私は・・・ファン扱いはもう嫌なんですっ」
そう言った瞬間、ボロっと涙が零れた。
「お、おいっ!泣くなよっ」
初めて聞く、浜岡さんの焦った声。
「、大丈夫か?」
「・・・大丈夫です・」
グイッと目元を拭い、顔を上げる。
浜岡さんの顔を見ると、なんだか困ったような照れたような顔をしていた。
「ファン扱いが嫌って・・・もしかして・・・」
「・・・・私、浜岡さんの事が好きです」
目を見ながらなんて、そんな格好いい告白は出来なかった。
ただ、恥ずかしくて、それでもこの想いを分かってほしくて。
「な・・・んだ。同じだったのかよ」
悩んで損したぜなんて声が聞こえてくる。
「・・・あの同じって?」
「あ?あ〜・・・その・・俺もお前の事が好きって事だ」
「は?」
あまりの答えに、私は間抜けな声を上げた。
「は?ってお前なぁ〜・・人が決死の思いで告白したっつーのに」
「え?あ?告白って・・・・・・本当ですか?」
「冗談でこんな恥ずかしい事言えっかよ」
数分後、私の顔は真っ赤になって。
それにつられて浜岡さんの顔も赤くなって。
二人して笑った。
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