君が望むなら








「憲ちゃんなんか大嫌いッッ!!」
「おい、ッ!」

聞こえる憲ちゃんの声にも振り向かず全力疾走する。
今振り返ったら、きっと困らせるだけだから。
ボロボロ遠慮なく流れる涙。
これ以上困らせる事はできない。


『競艇選手の彼女は大変そうよね』


いつか友達がそう言ってたのを思い出す。
その時はそんな事ないよって否定してたのに。
今じゃ否定できない。
会えない日の方が多すぎて、不安になる。
信じてない訳じゃないけど、こればかりはどうしようもない。

「っく、何やってるんだろう・・・っ」

荒くなった息を整えながら呟く。
走っていた足を止め、ゆっくり歩く。
拭っても拭っても溢れてくる涙。

「どーしてこうなっちゃうんだろう・・・」

歩きながら考える。
約束を、ごめんと断れるのは何回目だろう。
楽しみにしてるのは、自分だけなのかと思ってしまう。

「やっぱり、私が悪いのかな?これぐらい我慢しなくちゃいけないのかな・・・」
ーーッ」
「っ!?」

聞こえるはずのない声に驚いて振り向く。
私の前で立ち止まると、荒い息を整えようと何度か深呼吸をした。

「いきなり、走りだすなよ〜」
「何しに来たのよ」

こんな時にも憎まれ口を叩いてしまう。
私の素っ気無い声に憲ちゃんが戸惑う。

「え、だから・・その・・・」

ごにょごにょと口ごもる憲ちゃん。

「だから、悪かったって!」
「いいよ。憲ちゃんの悪かったは、今に始まった事じゃないもんね」
〜・・・」

情けない声を出して、肩を落とす。

「どうしたら機嫌直してくれるんだよ〜」
「・・・・・・・優勝したら」
「え?」
「次のレースで優勝したら、許してあげる」
「お、おい、?」

憲ちゃんの顔を見ず話す。

「優勝したらいいんだな?」
「うん」

少し考えた後、分かったと返ってきた。

「約束ね」
「おう!」

そこでようやく私は憲ちゃんの顔を見た。




























数日後

約束どおり憲ちゃんはレースで優勝した。

ー!約束どおり優勝したぜっ」

その時の憲ちゃんの嬉しそうな顔ときたら。
そして私はまた許してしまうのです。




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