どうか受け取って








、オーシャンカップが終わったら話したいことがる」
「話したい、事?」
「あぁ」

榎木さんはゆっくり頷く。

「今じゃだめなの?」
「あぁ。俺のケジメの為に。待っててくれるか?」

少し困った様な表情。
私は軽く笑いながらこくんと一つ頷いた。









オーシャンカップ当日

開会式が始まり、選手一人一人の挨拶が行われる。
今回もきっちり参加する。
榎木さんを見るために。
見れるのは、声が聞けるのはすごく嬉しい。
でも・・・

「キャー!!榎木さーん!」
「こっち向いてー!!」

この黄色い声援を聞かなくてはいけない。
人気があるのは嬉しいが、少しだけイヤになる。

「いっその事、私のものだって言えればいいのに・・・」

ポツリと呟いた声は、誰に届く事もなく。
沢山の声援の中に吸い込まれた。

レースが始まり、私はスタンドで手を握りながら祈る。
もちろん優勝してほしい。
でも、それ以前にケガをしないように。
無事に、何事もなくレースが終わるようにと。

「相変わらず格好いいな〜」

水面を走る榎木さんを見ると、人知れず顔が綻ぶ。

『一号艇、今一着でゴールイン!!』

白いカポックを来た榎木さん。
ピットに戻るまでその姿を目で追う。
そこでようやく安心する。














優勝戦

当然の様に榎木さんはそこに居た。
毎回毎回すごいと思う。
流石は艇王の名は伊達じゃないなと改めて思う。

「だ、大丈夫だよね。今日も」

自分が出走するわけでもないのに、手が震える。
緊張する。
何度か深呼吸をして、榎木さんを見る。

「頑張って、榎木さん・・・・」

呟き、ギュっと手を握り締める。

スタートからゴールまでの間、私は瞬きする事も忘れ榎木さんを追う。
どんな走りも見逃さないように。

そして、見事一番にゴールを通過した榎木さん。
この瞬間だけはどうにも慣れない。
段々瞳が潤んでくる。
視界がぼやける。

「相変わらずだな、私」

自分自身に苦笑しながら涙を拭う。
その後、榎木さんのインタビューを聞いて更に泣く事になるのだが。





















『優勝おめでとうございます!』

「ありがとうございます」

『今のこの気持ちを誰に伝えたいですか?』

「俺の、一番大切な人に」

『え?それはもしかして、恋人ですか?』

「はい、そうです」

『榎木選手からの劇的な発言!では、その恋人に向かって一言どうぞっ』

、今までありがとう。俺がここまで来れたのはお前の支えがあってこそだと思う。
俺と、結婚してくれ」





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送